表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/40

ショタのロンド10

 ロンドー!


 ここでようやく物語が大きく動きます。

 



 ……ついにこの時が来てしまいました。


 四話ぐらい前から心の準備はしていたというのに……僕の膝は震えています。


 泥に頭から突っ込むこと三回。お風呂は五回。


 お姉さん達の匂いは完全に消したというのに……ヒロインちゃんが……ヒロインちゃんが……遂に現れたのです!



「ジョニーちゃん。説明してもらいます」


「僕は……僕は天空船に行ってお姉さん達を丸裸にするんだ!」


「ほあた!」


「ボゲェェェェェェ!?」


「ロボぉぉぉぉぉ!? いきなりそっち!?」


 



 それは……実を言うと予期していました。必ず起きると。決して逃げられないと。何故ならこれが初めてではないからです。


 なので僕とロボは完全装備で黄昏時……大禍時に家を出ました。


 そして家の前、道の真ん中に立っている……腕を組んで仁王立ちしているヒロインちゃんとエンカウントしたのです。


 その瞳は焔を宿し、背中に夕日を背負ったその姿は炎の悪魔の如しでした。


 何故バレた、なんて考えるのは悪手でしかない。戦わなければどのみち死が待つのみ。


 でも五秒も経たずにロボが殺られました。早すぎます。


 ヒロインちゃんの初撃でロボは大破。恒星間ミサイルの直撃でも耐えられるはずのロボが一撃で沈みました。


 シールドを張る前に殺られたようです。


 この異常な戦闘嗅覚がヒロインちゃんの本当の恐ろしさです。ヒロインちゃんの攻撃対策でこっそりと改造していたのに、それを使う前に潰されました。


 というか前フリでそれはダメだと思う。出オチだよ?


「……ジョニー。覚悟はよいか?」


 ……よくない。ヒロインちゃんがこの口調になるのは本気でぶちギレているときです。


 何を言っても許されない『女帝モード』です。


 だから……だからこそ僕はっ!


「僕は諦めないよ! 僕の夢のため……君を倒してでも前に行くんだ!」


「ほあた!」 


「げふん」


 ……まぁこうなりました。大体予想通りです。ちょっと男気を出してみました。だって絶対に負けるんだもん。地面に仕掛けておいた電撃トラップが全く効いてないもん。今回はロボも手を抜いて無かったのに。


 こうして僕の意識はヒロインちゃんの手によってスパッと刈られたのでした。

 





 そんなわけで僕はヒロインちゃんにプロポーズしました。


 唐突ですよね。でも仕方無いのです。僕の意識が戻った時、目の前にヒロインちゃんがいたのです。瞳からハイライトの消えたヒロインちゃんが。


 すぐさま体のチェックをしました。その結果僕の体は長時間拘束されて、ろくに動かせない状態であると分かりました。


 ここで打つ手を間違えると次に目が覚めるのは病院のポッドの中です。


 三回ぐらいやったので間違いないのです。


 なので事前に考えていた台詞を言ったのです。


 経験が物を言うのですよ。えっへん。


 その結果……僕の命は繋がりました。首の皮一枚……多分そんな感じだったのでしょう。


 ようやく周りを見る余裕が出てきた僕は状況を把握して戦慄しました。


 何故か僕が居たのはヒロインちゃんの部屋で、ヒロインちゃんのママさんとよろずやんのお姉さんも居ました。


 ……こいつぁ早くこの島を離れた方が良いんじゃないかと僕が気付いた瞬間でもありました。




 ええ、ここでようやく僕の物語が始まるのです。


 僕の、僕のための、誰にも束縛されずに生きる道を探す物語が。


 僕は気付いたのです。今の状況が『おかしい』という事に。


 ずっと棚に載せていたから分からなかった。


 棚に載せるのが当然だと思っていたのです。


 でも今回の出来事は棚に載せるには重すぎたのです。棚が決壊したのです。ドンガラガッシャーンだったのです。


 これがきっと『思春期』というものなのでしょう。大人への第一歩と本に書いてありました。僕は大人になったのです。


 大人になって……逃げることを決めたのです。


 このまま棚上げを続けていたら僕はきっと一生この島に囚われる事になる。


 ヒロインちゃんの顔色を窺って生きる小さな男になってしまう。


 だから僕は決めたのです。表向きは天空船を目指す体を保ちながら……僕だけの楽園を探そうと。


 僕は……。


 僕はドエムじゃないんだよ!


 暴力的な女の子なんて好きになれないんだよ!


 朝から甘い空気とか胸焼けするんだよ!


 僕は硬派なの! 


 毎日ガラクタを弄ってるだけで満足なんだよ!


 ボッチでいいの! むしろ一人にして!


 僕は……。


 僕はっ!


 自由になってやる!


 この島から抜け出して自由を満喫してやるんだ!


 じじいの尻拭いも!


 暴力的な隣の子も!


 すぐに抱き付いてきて服を脱がそうとするママさんも!


 女装すると写真を撮りまくるパパさんも!


 全部全部忘れて僕は『幸せ』になってやるんだ!



 と指輪の話題でキャッキャッしている女性陣を前にひっそりと決意しました。


 見えないところで拳をグーです。


 決意したのは良いのですが、僕は一応未成年です。色々と問題がありました。正直言うとアンドロイドよりも今は僕の自由が優先です。


 僕はようやく『自分』というものを見つけた気がします。


 ……首に絞められた痕があるので多分何度か死線を越えたんですね。


 死を乗り越えて僕は『自分』を見つけたのです。自分探しって大変なんですね。


 とりあえずヒロインちゃんから解放された僕は大破したロボを回収して家で修理することにしました。


 帰りはあっさり解放されました。そのあっさり加減がむしろ怖い。なんでもない事のように済まされました。


 ……拉致監禁は流石に犯罪なんですけどね。





 家の前で壊れていたロボは……意外と元気そうでした。自力で動けないくらいに大破していましたが、コアのあるボディは無傷でした。


 腕とか足とかも道路に落ちていました。でもコアさえ無事なら大丈夫なのです。


 ここが機械生命体のすごいところです。


 すごいけど今回は役立たずでした。次回に向けてまた改造です。ロボを引きずって家に入りました。


 ロボは僕の相棒です。何だかんだで僕の大切な人です。でも僕の心の内はまだ言えません。自分でも整理出来ていなかった、というのが本音でしょうか。


 僕の中ではこの島を永遠に離れるつもりです。


 でもロボは?


 ロボはこの島から離れたくないとしたら?


 僕は……どうする? 無理矢理にでも連れていく?


 僕の心は千々に乱れました。


 だから……ロボが修理中に言ったこの言葉に救われたのです。

 

「マスタァ。私ハ、アナタノパートナーデスヨ? マスタァハ、一生私ノ面倒ヲミル義務ガアルンデスカラネ」


 それはいつものように怠け者なロボの何気ない発言だったのかもしれません。でも……。


 正直重いなぁと思いました。


 扶養宣言とか重すぎます。


 でも……心は少し軽くなりました。一人じゃないってこんなにも心強いものだったんだと、僕は知ったのです。




 ここまでがモノローグ……ですかね。


 ここからようやく始まるのです。


 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ