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ショタのロンド8 

 ロンドー!



 僕の好きな人は島最強です。


 いえ、『島最強』という名前の人ではありません。


 いつもは澄ました顔をしてるけど、すぐに『うにゅ』っとする可愛い女の子です。


 手汗のすごい女の子です。


 ……素手で鉄骨をねじ曲げる女の子です。


 ……馬力すごいよねぇ。






 あのアンドロイドショックから少し経ちました。5分とかそんなもんです。お姉さん達の姿は既にありません。完全に逃げられました。


 僕は島役場の地下から階段で一階に昇りながらどうしたもんかと悩んでいました。



 天空船。


 この世界の信仰対象と言いましょうか。みんな知っているけどすごく遠い存在です。


 何処に在るのか、みんな知っています。でも身近ではないのです。テレビによく出てますが行く手段はありません。売店の特集とかよくやってますが買いに行ける人がまず居ません。


 まるでフィクションみたいな存在です。むしろファンタジー?


 創作物の中では有名です。つまりそんな立ち位置なのです。桃源郷とか黄金郷とか。


 まさか自他共に認めるリアリストである僕が、そんな場所を目指すことになるとは。


 ……どうやって行くんだろう?


 こんなときは……どうしよう。頼れる人が皆無です。困ったのです。わりと深いところまで降りていたので結構な時間が掛かって一階まで昇ってきました。


 うんうんと悩みながらです。答えは出ないのです。


 手っ取り早く飛行機でも作れば……いえ、間違いなく撃ち落とされます。あそこは接近禁止です。毎年何機か撃沈されるのです。ニュースでもちょくちょく取り上げるくらい頻繁です。


 愛ゆえに特攻! と銘して何人も挑んで海の藻屑にされてます。撃ち落としはしますが、ちゃんと救助されるので死人は出てないそうです。


 天空船から曲がるビームが出て綺麗なんですよね、あれ。


 お椀から溢れた素麺に見えるのでテレビで見てると少しお腹が減ったりします。にょろ~です。


 僕もアレに貫かれるのは勘弁です。なので飛行機は無しです。


 何かないかなーと、悩みながら階段をカツンカツンと昇って、ようやく一階に辿り着きました。


 今思うといくら役場に出頭とはいえ、丸腰で来たのは間違いだった気がします。せめてスタンロッドでもあれば……お姉さんを逃がしはしなかったのです。三人も居たのです。一人くらいは確保できてたはずなのです。


 ……電撃って便利なんですよね。


 僕も食らった事があるので分かるのです。トラウマ級の思い出なので使いたくありませんが。ううっ……アウトロー達め。僕の尊厳を蹂躙した報い……必ず受けさせてやる!


 とまあ、それはさておき。一階に到着したので、とりあえず非常ドアに耳を当てて気配を探ってみました。いつもは人がほとんど居ない狭い空間です。都会にある小さな郵便局……がこんな感じらしいです。


 それを忠実に再現したのが、この島役場なのだそうです。


 意味が分かりません。とりあえず棚上げです。とうっ!


 僕が使っていた階段は非常口扱いなので部屋の隅に設置されています。階段から役場に繋がる扉は引き戸です。なんともアナログです。でも緊急時ってアナログじゃないとダメなのです。降りるときは楽チンなエレベーターだったんですが、いざ地下の部屋を出て一階に上がろうとしたら壊れていたんです。


 多分アンドロイドのお姉さん達が僕を振り切るために壊して行ったのでしょう。


 ちょっとドン引きしました。


 この島役場は受付が一階にあるだけで本当に仕事しているのは地下にある各部署なんだそうです。ヒロインちゃんのパパさんも地下の何処かで仕事に追われているそうです。


 安全保障上、ここの地下の作りとかは詳しく言えないそうです。一応公的な機関なので当然です。そんなところを壊していったのです。すごいですねぇ。


 エレベーターの扉は無理矢理こじ開けられた様で無惨にひしゃげていたのです。恐る恐る中を覗いてみるとエレベーターシャフト内部もズタズタでした。保守点検用の明かりは付いてましたけど所々でバチンバチンと火花が散ってました。


 うん。ドン引きですよ。


 なので階段を使うしかなかったのです。


 パパさん大丈夫かなぁ。


 パパさんは自分のことを『働きアリ』と言っていました。大人って大変です。


 ウルフと散歩するのが毎日の楽しみって言ってましたので……大人って本当に大変なんですねぇ。


 さてさて、パパさんは多分大丈夫として僕の事ですね。


 音からは何も分からなかったので一階に繋がる引き戸の扉をこっそりひっそりと開けてそろーりと役場内を確認したのです。


 ひょっとしたらまだアンドロイドなお姉さんが居るかもと思ったのですが……まぁ居ませんでした。そんな気はしてました。


 あのお姉さんが言っていた言葉。


 自分が欲しければ天空船に来い。


 それはつまり僕への挑戦状なのです。男には決して逃げられない瞬間というものがあるのです!


 で、それはとりあえず置いといて。


 一階の受付にはアンドロイドのお姉さんは居ませんでした。でも受付には受付のお姉さんとよろずやんのお姉さんが居ました。まだこっそりと覗いている僕に気付いてないようです。


 何やら二人で会話をしています。女子トークですね。よろずやんのお姉さんは三つ編み眼鏡でエプロンを着けてます。お店からそのまま来たんでしょう。受付のお姉さんはいつものようにスーツ姿のキリリとした……静止画です。


 ……遠くから見ていると二人とも美人さんです。


 そういえば……受付のお姉さんって僕がいつ来てもここに居るんですよね。お休みとかどんな風に過ごしているのか、ちょっと気になります。うちのロボみたいにゴロゴロしてるんでしょうか。


 そういえば……よろずやんのお姉さんも僕が行くときは必ずお店に居ますねぇ。こうして外に出てるということは……僕は毎回運が良かったんですねぇ。あ、そうだ。都会人であるお姉さんなら天空船について何か知っているかもしれません。


 そうと決まればお姉さんにゴーです。


 アヒャァァァァァァァァ!



 ちょこっと裏話。


 アンドロイドなお姉さん達は天空船に帰還するためにショートワープでエレベーターシャフトを使いました。ある程度の助走が必要になるのでここが使われちゃったのです。内部がズタズタになっていたのは、その爪痕です。

 

 ハイテクなのかローテクなのか判断が難しいですね。


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