三人称さんの三人称解説 天空船2
三人称さー……ん? 今回は……無くてもよかったか?
天空船。
またこいつの話である。
いや、オカマの『グランドマザー』や喪女を拗らせたアンドロイド達の話ではない。
……まぁ結局は、そいつらの話になってしまうのだが。
世界に悪名を轟かせるダンバラ団の根城『バラダン島』
そこで起きた小さな事件の話である。
前回の爆破事件も事件だが、それではない。別の事件……物語の根幹に関わる話である。
事件の発端はバラダン島の役場に併設されている『遺物センター』からの知らせであった。
『危険物の発掘を確認。精査されたし』
この時代でも報連相は必須である。特に遺物に関しては必ず遺物センターから天空船へと報告する必要があった。
それはあのいい加減な性格をしている機械生命体であってもサボる事が許されないレベルでの厳命である。
……玉に報告をサボる奴がいて職場をクビになるくらいには重要な案件である。つまりその程度だ。うむ。
当初天空船の受付スタッフもそこまで重大な物が発掘されるとは思わなかったのだろう。
報告があの『バラダン島』のものからとはいえ、いつものように対応していた。
いつものようにシフトに入っていたアンドロイドのお姉さんが普通に遺物センターからの報告を受けて普通に調べて……普通に大騒ぎとなった。
その大騒ぎの末に部屋が爆発したのだが、まぁそれはいい。普通とは言えないがそれはいいのだ。
この世界全体を見ると発掘士というのはそれなりに人口が存在する珍しくはない職業である。
何せ資源のリサイクルを担う子供に大人気な花形職業である。今話題のSDGなんちゃらであるな。
……すまん。嘘だ。
食い詰めたゴロツキや、訳ありの人間が最後に流れ着く職業……それが『発掘士』である、というのが世間一般の認識だ。
……現実はいつも残酷なものだ。
常にアウトロー達に追いかけられるという危険な職場……いつ崩れるかも分からない遺跡での探索……かといって必ず儲かる訳でもない……と、発掘士というのは、かなりリスキーな職業なのである。
子供に勧めたくない職業百年連続ナンバーワンは伊達ではない。
アウトローと遭遇する確率の高さから機械生命体のパートナーが必須にもなるのでその雇用料も発掘士には掛かってくる。
ロボット達は傭兵なのだ。
……ろくに働かない傭兵なのだ。
発掘士の半数がパートナー無しで遺跡に潜る程には傭兵がサボるのだ。
ぶっちゃけ傭兵というか足手まといの無駄飯ぐらいである。
多くの発掘士はサボりまくる機械生命体の尻を蹴飛ばしながら遺跡に潜り糊口を凌いでいる。
斯様に『発掘士』というのは過酷な職業なのだ。
だがそれなりの数の発掘士が現実として存在しているのも事実。
現実は……残酷なのだ。世知辛いのだ。
ちなみに、発掘士のパートナーとして働いていた傭兵(役立たず)が契約解除されて仕方無く流れ着く場所……それが『ロボットバトル』だったりする。
……正直ろくなものではない。
が、その辺に関しては追々物語の進展に伴い明かされていくだろう。
今は発掘士に戻るとする。
発掘士のレベルはともかく、その全体数は世界全体で見るとかなりのものである。となると各地の遺物センターに持ち込まれる遺物もそれなりの量になる。
その多くはガラクタであるが危険な物も当然含まれてくる。
毎日何かしらの危険物報告が天空船に上るくらいには多くの遺物が日々発掘されるのだ。
例えばこれ。
かつて人間が存在していた時代……前時代に崇拝されていたという『エロフィギュア』が危険物報告の筆頭であろうか。
そのエロエロな肉感造形に魅了されしものは尽く家庭崩壊を起こすとされた恐怖の偶像……かつての人類が如何に破滅と退廃を望んでいたのかが分かる歴史的な証拠でもある。
今の世界にとって危険なもの。それを回収するのも今の天空船の仕事である。
……正直何でこんなものを? というアンドロイド達のぼやきは、あの『グランドマザー』を以てしても明確な答えが出せていない。
過去の人間がおかしかったのだ。きっと。
まぁそれはそれとして。
今回の報告……バラダン島から上がってきた危険物はフィギュアではなかった。エロエロパーツの一部でもなかった。
しかしながら、それはとても危険な物の一部であったのだ。
……ここでネタバレさせると色々とつまらないのでボカしておくが、わざわざ『グランドマザー』が回収のため地上に降りると駄々を捏ねる程度には重大な物だった。
……発掘したショタに逢いたいが為にアンドロイド達に駄々を捏ねてた可能性も……まぁ否定できないレベルでは存在が確認されている。
つまり……まぁ……なんだ。
バラダン島から報告を受けた天空船は至急回収部隊を派遣することにしたのだ。そして三人のアンドロイドがくじ引きの末に選ばれ天から降りていくことになったのだよ。
なったったらなったのだ。疑問も質問も受け付けん。
この凄惨なくじ引き劇の裏で天空船崩壊の危機もあったとか、なんとかしたとか。
回収するだけなので派遣するのは一人でも良かったのだが、天空船のアンドロイド達が全員殺気立ち洒落にならない事態になった……と後に『グランドマザー』はテレビの取材に答えたという。
……意外な所で世界は危機を迎えていたのだ。やはり遺物は恐ろしいという事なのだろう。うん。多分な。
そして……そう、このアンドロイド達がこの物語が紡がれる切っ掛けとなった、と言っても過言ではないのだろう。
彼女達はバラダン島に住む一人の少年の運命を大きく動かした。
全ては真っ直ぐな瞳で『お姉さんの中、見せて!』と懇願されて表面上は取り繕ったものの致命的におかしな返答をしてしまった喪女アンドロイドの一言から始まったのだ。
『おほほほ! わたくしの中身が見たくば、いつでも天空船までいらっしゃい!』
……。
……これを言う方もアレであるが……これを本気にする少年も……アレ……である。
しかしこれを切っ掛けにこの物語は始まる。少年の大冒険はここから始まるのだ。世界を巡り、多くの出会いやロボットバトルを通して少年は成長していく。
少年と同じように天空船を目指すライバルとの出会い。そして旅先で唐突に訪れる出会いと恋、脳天が痺れるようなロマンス。
男の子は旅の果てに大人へとなっていく……。
という物語を期待されると間違いなく裏切られるだろう。何せ少年はあの『バラダン島』の出身だ。
かの悪名高き『ダンバラ団』の巣で育った純正のショタである。
世界の害悪として迫害されるも、それを蹴散らして世界に覇を唱えた求道者達……それが引きこもった島が『バラダン島』なのである。
『己が性癖を受け入れ心を解き放て』
『イエスロリータ! ショタも良いよね!』
『愛は全てを許す。つーか、許せ』
などなどぶっ飛んだ教義を持つのがダンバラ団だ。己の性癖に忠実なダンバラ団が引き起こした事件は未だに世界各国で語り草となるほどである。
そんなダンバラ団に囲まれ育った者がマトモであるわけがない。
しかもショタ。
あのダンバラ団が崇める現人神『ナマショタ』である。
それが主人公なのだ。波乱に満ちた物語になるのが必然であろう。
ショタの皮を被った化け物が世に放たれ……世界はまたしても波乱へと向かうのだ。
この話は、なんとなーく蛇足な気配がします。
説明には、なってるんですが……微妙かなぁ。