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【第69話】俺の為すべきこと




 ヒノミさんの『プレゼント到着』という言葉にワクワクした俺はギルドの入口扉へ視線を向けた。すると、外から武器を持った屈強な男女6名が姿を現した。何が何だか分からない俺は直ぐにヒノミさんへ問いかけた。


「あの屈強な感じ……もしかして、ヤバい物を運ぶ、ヤバい運び屋か何かか?」


「ヤバいを連呼しないでくださいよ! あの方達は元ヘカトンケイルのハンターです。私が色んなハンターさん達に『現行のギルドシステムの歪さ』と『ガラルドさんの凄さ』を説明してスカウトしたんです。今日は6人だけしかここにいませんが、全員合わせれば14人もいるんですよ、エッヘン!」


 これはあまりにも大きなプレゼントだ。スカウトしたなんて軽く言っているけれど、これだけの人数を短期間で別の町に移動させるなんて、とんでもない苦労だったに違いない。


 俺はつくづく周りに恵まれた人間だと目頭が熱くなってきたが、ここで泣いてしまったらリリスに揶揄われてしまうと我慢して視線を右に逸らした。すると我慢したのが馬鹿らしくなるくらいリリスが号泣していた。


「うばああぁぁん、皆さぁぁん、ありがどゔございまずぅぅ!」


 鼻水で何を言っているのか分からないリリスから貰い泣きしないように今度は目線を左に逸らした俺はヒノミさんへ金銭事情を話すことにした。


「重ね重ね本当にありがとなヒノミさん。だけど、俺達は色々あって賞金もほとんど使ってしまったから、ギルド設立は当分先になりそうなんだ……。だから、申し訳ないがヒノミさんについてきてくれたハンターさん達は四聖のギルドに入ってもらわなきゃいけなくなるな」


「ガラルドさん達がシンバードに来てから今日までの活動はシン国王にお聞きしているのでお金がなくなったことも知っていますよ。それでも大丈夫なんですよ、ね、シン国王」


 何故かヒノミさんはシンに話しを振った。するとシンが俺の前の席に座り、壁地図のように大きな紙を広げて語り始める。


「ここからは俺が話そう。実はコロシアム翌日にリリス君、サーシャ君、ストレングには話していたのだけどガラルド君にやってほしいことがあるんだ。それは『ドライアド復興計画』だ。この計画はまず――――」


 それからシンはドライアドという町の住人が全員帝国に連れていかれてもぬけの殻になっていること、復興にはどれくらいの時間と労力がかかるかなど、事細かに教えてくれた。


 四聖と同じかそれ以上の大仕事に困惑した俺は断ろうかと考えていたが周りの皆が『ガラルドなら出来る』と強く押してきて、断ることは出来なさそうだった。


 特に師匠であるストレングの圧は強く、俺へ期待してくれていると感じられて嬉しかった。それにギルド設立を宣言していたこともあるから、上位互換と言ってもいい大業を断ってしまうのは名折れかもしれない。俺は首を縦に振った。


「身震いする程の大仕事だがやってみるよ。俺自身は大した人間ではないが、ヘカトンケイル、シンバード、ジークフリート、色んな所で出来た自慢の仲間たちがいれば成し遂げられそうな気がするしな」


 俺が了承の言葉を返すと、ギルド内にいる全員が拍手を贈ってくれた。まだギルドを設立した訳でもなければドライアドを復興した訳でもないのに不思議と大家族を手に入れたような気分だ。


 そして、皆の拍手が鳴りやむとリリスが新聞を手に取りながらボソッと呟く。


「私達の活動が大きくなって世の中が変わっていったらガラルドさんを酷い目に遭わせたレックさん達もスターランクの倍率補正を受けられなくなりますね。そうすれば彼らの差別意識も消えてなくなる日が来るかもしれないですね。私は今でもレックさんがガラルドさんに謝ってほしいと思っていますよ」


 ほんの60日ほど前の出来事だがレック班から追放されたことが随分と前の事のように感じる。思えばレック達に裏切られて捨てられたところをリリスに助けられてから全てが始まったんだ。


 怒ったリリスがレックをビンタしたこともあれば、オーガを撃破した後に俺がレックに言いたいことを言ってやった件もあるから、もうあまり気にしてはいないのだがリリスは今も腹が立っているようだ。仲間想いなリリスらしいと言えばらしいのだが。


 そんなリリスにヒノミさんが渋い顔をしながら言葉を返す。


「差別意識が消える日は来るかもしれませんが、スターランクの倍率補正に関してだけはレックさんのみ例外的に厚遇され続けるかもしれないですね。彼は扱いが別格なので」


 彼は扱いが別格? 確かにレックは貴族出身で高い倍率補正が掛かっていたのは確かだが別格という言葉が引っ掛かる。俺は言葉の真意をヒノミさんに尋ねる。


「レックはそんなに偉い家の人間なのか?」


「レックさんがどういう名前でハンター登録をしているのか、ガラルドさんはご存知ですか?」


「フルネームは確かレック・ウォルドだった筈だが」


「そうです、ウォルドで登録されていますね。ですがこれは言わば通名のようなものなんです。彼の正式な名前はレック・リングウォルド。帝国リングウォルドの皇帝アーサー・リングウォルドの第四皇子なんです。半分見捨てられているという噂もありますが……」


 まさか、こんな話題から帝国に繋がるとは思わず驚かされた。レックがそんなにも偉い家の人間だったなんて……。


 そう言えばビエードが死ぬ間際に


『魔力砲をはじめとした兵器の開発、魔獣の活性化、近年の強引な帝国の支配、それら全ての鍵を握っているのは死の山と帝国の第一王子モードレッドだ』


 と言っていたけれど、レックは兄貴と比べて随分と庶民的な活動をしているようだ。


 通名というのも貴族が正式な家柄は明かさずに、ある程度の権威を示す時に使うケースは多い。レックの場合なら皇帝の親族であり近しい人間であるとアピールしつつ、皇帝の息子であるという情報は隠したいという狙いがあって通名を使っていたのかもしれない。


 有名過ぎるぐらい有名な家に生まれ、優秀な兄弟も居たなら何かと居心地の悪い人生を歩んできた可能性だってある。


 あいつが何で危険なハンターなんて仕事をやっているのかは分からない。だが、今度会う事があれば生まれで苦労した者同士、少しは話をしてやれるかもしれない。正直あまり会いたくはないのだが。


 現在レックが何をしているのかヒノミさんに聞いてみよう。


「レックはまだヘカトンケイルでハンターをやっているのか?」


「いいえ、ガラルドさん達がヘカトンケイルを出て行ってから数日後、突然ハンター登録を解消し、ハンター業をやめて町から出て行ってしまったんです。理由を尋ねたのですが『このままではいられない』と鬼気迫る表情でブツブツと言っているだけで詳細は分かりませんでした。正直ちょっと怖いぐらいでしたね」


 レックはレックなりに悩みや考えがあるのかもしれない。帝国繋がりで何か情報を得られたらと思ったが難しそうだ。俺達がレックの話を続けているとシンが今後のことを話し合う為に、再び話に入ってきた。


「ガラルド君の元仲間や帝国の事も気になるが、今はドライアド復興計画やシンバード防衛に気持ちを向けておくれよ。特にシンバードはローブマンが言っていた90日周期の襲撃のターゲットにされる可能性だってあるのだからね」


 シンの言う通りだ。ヘカトンケイルを襲った魔獣の大軍が90日周期で各地を襲ってくることが分かっている以上、次の標的がシンバードになる可能性は充分にありえる。確か南の町と港町が襲われる確率が高いと言っていたから港町であるシンバードとポセイドは他の町よりも危険だ。


 ヘカトンケイルが襲われてから、もう60日以上が経っているから次の襲撃までもうあまり時間はない。ドライアド復興計画のリーダーになったからという訳ではないけれど、俺は皆に準備を整えるよう促す。


「シンの言う通りだ。世の中の変化が気になるところではあるが、今は目の前に迫っている問題を皆で1つ1つ対処していこう。俺達は色々な人間が混ざった混成チームであり、基盤も組織力もない。だけど全員が弱きを守り、不条理を嫌う、心優しき者たちの集まりだ。きっと何だって成し遂げられる筈だ。皆、これからもよろしく頼む!」


 ギルド内に再び拍手がこだました。さっきの祝いの拍手とは違い、応援や立志の拍手ではあるが、どちらにしても暖かく心強い限りだ。


 そして俺達はヒノミさんや新しいハンター達と今後について詳細に話し合って解散となった。明日からは準備、修行、政治の勉強などなど大忙しになりそうだ。





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