9話 総一郎の邂逅
総一郎目線。
シュウヘイさんが運転してくれている、なんでもやりたがる人だ。だから、信頼が厚いのだろうか、強面以外で悪い噂を聞かない。
軍用トラックの助手席に乗って、シュウヘイさんと今後について相談する。タサクさんと護衛の二人は屋根付きの荷台に乗ってもらってる。
タサクさんは、いつも困った顔をしている現場肌な整備士だ、護衛の二人はそれぞれ、ソフトモヒカンの太マッチョの人がマシロで眼鏡の細マッチョの人がギンジらしい。
最初あたりはシュウヘイさんの顔見知りのコミュニティの人たちと挨拶しながらトラックを走らした。
この一年で町は随分と様変わりした。まず、生活する事が優先なので、自給自足の為に田畑が増えたし、狂暴にならなかった家畜を飼育した。
馬車で品物を輸送する商人や鉄を作り加工する職人も増えた。
ただ、残念な事にどれにも属さないグループによる略奪があるのも事実だ。
とはいえ、燃料は少ない、輸入に頼っていたツケが回ってきた。
シュウヘイさんの話では、もともと首都だった東の方でも開発を進めているみたいで、異能力を発電機に鉄道が機能すればと考えているらしい。
そんな話をしている間に、研究所付近まできた。コンクリートで出来た三階建ての建築物の中は昼間といえど、暗い。
電気の供給に制限があるからだろう、研究所の殆んどが機能していない。
持って帰りたいのは、資料、インゴット、コンピュータ、溶鉱炉は無理か、近所の製鉄所と交渉出来るかな。
イメージは悪くないはず、自信はないが、こういう閃きは大事にしたい。
タサクさんには何を作りたいか伝えてある。
夕方までには搬入が終わり、一旦駐屯地に進路を向ける。
途中で手を振ってやってくる青年がいた。ボサボサ髪が邪魔で目が隠れていて、第一印象は細長い、百合子さんと同じくらいの背丈。着流しの脇には木刀を差している。
「すいません、住むところも無くて、なんでもしますんで置いてもらえませんか?」
シュウヘイは、いつものセリフを使う。
「特に来るのも去るのも拒んではいない、ただ、こんなご時世だ、働かざる者食うべからずで頼む。」
「ありがとうございます、サトルと言います。親が医者でして、少々なら医療の経験有りますんでなんでも言ってください。」
みんな自己紹介する。
「総一郎です、よろしく。」握手をし、目を見る、赤みがかった黒、月食みたいな色だ、口にはしないが。
「よろしくお願いします、サトルです。」
気さくな青年のようだ。
大型のコンピュータでごちゃごちゃした荷台に所狭しと乗ってもらう。
日が沈むまでには帰れそうだ。
次は本編か外伝か?