19話 通信・製鉄所・総一郎
5年も経つと、獣人同士、半獣人と人間との間に子供が生まれる事がある。
だいたいは、どっちかの子供が産まれる。
学舎も出来た、いくつか廃屋を切り崩し、木造二階建ての大きな校舎と校庭、近くにブランコ、すべり台といった遊具のある公園も建設予定、今シュウヘイが力を入れている事業のひとつ。
いままでは、親や近所の大人たちが生きるのに必要な事を教えていたが、正式に教師を招き、色々な事を学んでいけたらと思う。
来年あたりから生徒も募集して、試行錯誤していく予定、来年7歳になる光一郎も募集予定だ。
こんなご時世でも教育や子供同士の集団生活が将来の為になるだろう。
町の中央に市庁舎と学舎、それに居住区も着々と建設中、北西に製鉄所、北東に牧場、南に駐屯地や田畑がある。さらに南が昔住んでいたアパートだったが、もう別の獣人メインのコミュニティになっていた。
一番大きな変化としては、通信が出来るようになったと、タサクさんが大喜び。
なぜ通信が機能したかはわからない。東の技術力のおかげか、空気中に残った残留物が薄くなったのか。
今まで出来なかった遠距離での情報交換が出来るようになったのは大きい。
外海に面した地区からの情報だと、沖に出るとかなり危険らしい、小島のようなクラゲが駆逐艦を沈めたとか、巨大なウツボが鮫を丸呑みしたとか、白いウサギが泳いでいたとか?
真偽もわからない情報が飛び交った。
東の都では、再び貨幣が出回っている。物々交換では経済が成り立たないみたいだ。
技術力も人口も東高西低なんで似たような開発も向こうの方が早い、もう機関車を動かそうとしている、だからといってこちらの研究を止めてしまっては、いつまで経っても技術力向上に繋がらない。
負けてられない。
この異能力蓄積乾電池、名前が長いので、魔法缶。
この魔法缶、相変わらず入出力の比率が悪いまま、そこで、色んな金属を試す為、イッテツさんの所によく足を運ぶようになった。車は運転出来ないので自転車で。
製鉄所の溶鉱炉は、高さ50mくらいの赤錆まみれの鉄塔を中心に、同じく赤錆まみれの配管がところ狭しと張り巡らされている。
炉の炎が消えると、溶け残った金属が固まり、二度と使えなくなってしまう為、絶えず誰かが見張っている。
その炉の周囲に、金属を成形、加工する工場がいくつか有り、そこは、コテツ一家の三男サンテツさん、フェレット族の獣人で一回り大きい体格をしている、この人が指揮している。
三兄弟の長兄イッテツさん、イタチ族の獣人、茶色の体毛で目の縁は黒、コテツ一家の交渉担当。
ちなみに次男のニテツさん、オコジョ族の獣人で体毛は白い、コテツさんの補佐をしている。
三人とも奇跡的にイタチ顔の獣人なので、イタチ三兄弟と言われている。
長兄イッテツさんは、世界が一変した日、妻がうつろになって、まだ年端もいかない娘を殺そうとしてたので、拳銃で妻を撃った。たまたまそれを息子が見てた。
多感な年頃の息子ハガネ君は、そうとう荒れてヤンチャな時期があったが、今では和解して、祖父コテツの跡継ぎとして修行中。
代々引き継いだロングジャケットを羽織っているが、物騒な漢字が刺繍してある。あえて読まない。
通信器が活きた事でサトルの所とも連絡が出来るようなった。
ひさしぶりに近況報告した。
子供が出来て大変だけど楽しんでるみたいだ。
翌年から、光一郎を学舎に預け、僕は、すぐそこの駐屯地研究所、百合子さんは、牧場方面の派出所勤務だ。
さらに翌年、7年目の春、駐屯地から居住地に引っ越した、木造二階建ての瓦屋根、一階と二階に二部屋ずつ、玄関の横に車を置き、小さいけど裏に庭もある、きっと菜園にするだろう。
アカン、誰もしゃべってないや




