14話 傷つき倒れた者たちは
トワコが腕を組み、待っていた。
「いらっしゃい。」
総一郎、百合子&光一郎は病室に入る。
目は包帯でぐるぐる巻きなので、起きているのかわからないがサトルの方から声を掛けていた。
「光一郎だっけ?いるかい?」
そう言ってサトルは左手を出す。
「だー!」
百合子さんが光一郎を近付けると、光一郎は両手をバタバタさせて、サトルの人差し指を握る。
「イテテ、この感触だ、この感触が俺に信念を思い出させてくれた。」
「総一郎、百合子、ありがとう。」
「俺は、みんなとコハクに全てを話して謝るよ。」
百合子さんが、あえて厳しく諭す。
「人の心を操ってたなんて聞いたらみんなはあなたを非難するでしょう、常に後ろ指をさされ、白い目で見られますよ、いっそ黙っててもいいんですよ。」
「覚悟はしている、俺がしでかした事だ、残りの全てを人の為に尽くすつもりだ。」
やっぱりサトルは強い。
「俺は大丈夫だ、今はまだ何も出来ないけど、良くなって、医者の道を進みたい。後ろの人が許可をくれればだが?」
後ろを向くと、いつの間にかトワコが扉にもたれていた。
「よく気付いたねぇ?」
「あんたが入ってくる度、タバコの匂いがする。」
「そんなに臭うか?まぁ見えるようになったら考えてやる。」
自分の服の匂いを嗅ぎながら一言答えて、去っていった。
ニヤッとするサトルの目は包帯で見えないけど、未来を見る目は希望に満ち溢れているだろう。
僕たちは病室を後にした。
結局、マシロさんは見つからなかった。
ギンジを慕っていたという話から、ひょっとしたら、一緒に出ていったのではないかという噂も流れた。
陽が沈む頃、畑の片隅のテーブルで家族仲良く3人と1匹で食事をしていると、ズンズンと総一郎目掛けて歩いてくる軍服姿のコハクがいた。
椅子に座ったままの僕の前で止まり、開いた右手を差し出す。
ニカッと笑いながらの宣戦布告。
「よろしく、総一郎。」
受けて立とうぞ、ライバルよ。
「よろしく、コハク。」
夕陽を背にしたその人は、とても男には見えない、恋する戦乙女が立っていた。




