1話 序章―総一郎
本人は至って真面目に研究に取り組み、入所した総一郎、男性としては頭ひとつ分小さな体型ながらも着々と成果を挙げてきたのは、努力の証。
研究者ながら機械工作もこなすのは、なんでも一から始めたいからだ。
「大きな花をプレゼントしたい」
棘しかない花は、いつか出会う運命の人のために、まだ咲かないでくれ。
入所して8年が過ぎた頃、出張先の重要な会議で休憩中、黒のスーツ姿でお土産や書物の紙袋で両手が塞がった状態で歩いていた。曲がり角で、人とぶつかりそうになって、目が合った。
衝撃が走った。
恋に落ちた。
無意識に紙袋が地面に落ちた。
よろける彼女を支えきれず、二人まとめて倒れ込む。
一瞬の間のあと、起き上がり、再び目が合う。これを逃せば二度と無い、と思い、声をかける。
「あ、あのぅ。」僕の方が早かった。
「次はいつ会えますか?」同時だった。
周囲の目も気にせず、二人で笑いあった。
それから、何度も二人の時間を過ごし、互いの勤め先にも紹介するようになった。
周りの評価は、
大柄で無愛想な、軍人の鑑。
でも、本当は、
自然が好き、花が好き、ヒラヒラしたスカートが好き。
占いで一喜一憂している姿は可憐な少女のようで、大柄な体型が何倍にも小さく見えた。
僕は鍛えないといけない、彼女を支えるために。
はっきりとした話口調、好きなクラシックや書物、雨の日の過ごし方、些細な事全てが好きになった。この人となら、何があっても大丈夫。
結婚式は挙げていない、互いの忙しさもあるが、なにより先に子宝に恵まれた為もある。仕事一筋だった男が家庭を優先し、息子に悪戦苦闘する日々を過ごしながらも平和な毎日だった。
子供が生まれ、一歳を過ぎたある日、空を横切る一機の戦闘機が落とした爆弾が、降ってきた隕石と融合した時、
世界が一変した。
次の話でワンセットですけど、言葉のチョイスとボキャブラリーが悩み。