おなかぽんぽこりん
穏やかな日々は過ぎていき、もう臨月。
シャーロットのお腹はパンパンに膨れて、今にも赤ちゃんが飛び出して来そうだった。
そしてそのシャーロットは、城の庭にあるハーブ園にやって来ている。
「はーい、ハーブさん達、今お水をあげますからねー」
シャーロットはよいしょっと声を上げて屈み、ジョウロに水を入れてハーブ達に水をやった。
「シャーロットさまっ!!」
遠くからそれを見つけたジュディが、大慌てで走ってくる。
「何をやっているんですか!? 妊婦が重い水なんて持ったらダメでしょう!」
ジュディはシャーロットの持っているジョウロを取り上げた。
「あん! ジュディ、酷いわ。私が楽しみにしている植物さん達とのコミュニケーションを邪魔するなんて!」
「い、い、ま、し、た、よ、ね? お水は重いから水やりはわたしや庭師に任せてくださいって」
「でも、私があげた方が大きく育つんですのよ?」
「だ、め、で、す!!」
ジュディは庭師を呼んで、ハーブ園の水やりを任せた。
シャーロットがブツブツ言いながらジュディに背中を押されて建物内に戻って行くのを、ライリーは二階の執務室の窓から見ていた。
「シャーロットの、あののんびりのほほんな所はなんとかならないのかな。もう産まれそうだっていうのにあののんびりさ。これから赤ちゃんのママになるのに心配だよ」
ライリーの言葉に、一緒に仕事をしていたディリオンはため息をつく。
「似た者夫婦なのだよ。ライリー、人の事は言えんな。なんだ、こののほほんとした外交報告は。こんな報告書は通さんぞ」
「ちぇー。フレッドならちょいちょいって直して通してくれるのに」
ライリーの外交手腕は磨きがかかり、諸外国とのやり取りもスムーズに行なっている。
ただ、行動派なライリーは事務仕事は苦手であった。
外向けの書類ならばきちんと書けるのに、内向きの執務室等に資料として残しておくような書類には、端折ってしまうことが多い。
肝心なところの抜けはないので、フレッドは良しとしているが、ディリオンは厳しく取り締まっている。
ライリーがディリオンから書類を渡されて、再度机に向かうと、窓からシャーロットとジュディの会話が聞こえる。
「ぶーたれないでください。今日のお茶にはシャーロット様のお好きなパウンドケーキにしたんですから」
「まあっ! ほんとう? では、急いでもどらなくちゃ」
「シャーロット様、急がなくてもケーキは逃げませんって……シャーロットさまっ!!!」
平和なケーキの会話が途切れ、悲鳴にも似たジュディの声が聞こえた。
ライリーとディリオンが慌てて窓の外を見ると、茫然と立ちすくむシャーロットと、慌ててシャーロットの足元にしゃがみ込むジュディが見える。
「ジュディ! シャーロットに何があったんだ?」
ライリーが窓からジュディに問いかけると、ジュディは泣きそうな顔で二階を見上げた。
「シ、シャーロット様が、破水されました……!」




