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人質姫と忘れんぼ王子 番外編  作者: 雪野 結莉
シャーロットとライリーの贈り物

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シャーロットのお誘い

 ライリーは執務で疲れた体を引きずって、寝室を訪れた。


 夕食も湯あみも済ませて、あとはシャーロットの待つ部屋で、ゆっくり休むだけ。


 休むだけなのだが、ライリーは気が重かった。


 無垢なシャーロットを見て、手を出せなかった結婚初夜を思い出すからだ。


 それから何日も経っているが、未だにシャーロットの素肌に触れることはできていない。


 触れることによって、シャーロットに嫌われたらどうしようと思う気持ちがライリーの欲を上回っていた。


 しかし、今日は大丈夫! かもしれない。

 なにせ、ジュディがシャーロットの入浴に時間をかけると言っていた。

 それを聞いた瞬間、これはジュディからのサインだと確信したのだ。

 房事教育はしましたよ、というサインであると。希望という名の確信だけど。



 ノックせずに部屋に入ろうとして、ふと手を止める。

 まだ早い時間だし、きっとシャーロットは起きて待っていてくれているだろう。

 以前なら、触れられないシャーロットと会うのが怖くて、シャーロットが寝静まってから音を立てずにそっと入っていたが、今日は堂々とノックをして部屋に入った。


 ドアを開けると、結婚初夜と同じように、シャーロットは長椅子に座ってライリーを待っていた。


「ライリー陛下。お疲れ様でございました」

 シャーロットは立ち上がり、ライリーの元へと足を運んだ。


 ライリーはシャーロットの夜着がいつもと変わらず鉄壁の守りをするものだったことに、少し肩を落とす。


「ああ、うん。シャーロットもお疲れ様」

「ふふ。私は何もしていませんわ。いつもお仕事お疲れ様です。ライリー陛下が一生懸命、私たちのことを考えてくださっているから、こうして幸せに暮らせると思っていますのよ」


 キラキラと尊敬の眼差しでライリーを見つめるシャーロットを抱き寄せ、その髪に頬を埋めた。


「君のためならいくらでも身を粉にして働くよ。オレの隣に居てくれてありがとう」


 腕の中にシャーロットがいる。

 それだけのことでも、なんて幸せなことなのだろうと、ライリーはシャーロットを抱きしめる手に力を入れた。

 そうさ。触れられないくらいなんだ。シャーロットはオレの奥さんになってくれたんだぞ。


 ライリーはシャーロットの体温を堪能すると、少し体を離して手をシャーロットの腰に回してベッドに向かって歩き出した。


 そして、ふたりでベッドに入り横になる。


 ライリーは鉄壁の守りのシャーロットを見て、今夜も大人しく休もうと、そう思ってベッドに入ったのだが、腕の中にいるシャーロットを見ると、だんだんと目が冴えてきてしまった。


 あんなに疲れていたのに。そして、触れられずともシャーロットがいるだけでも幸せだと思っていたのに。男ってしょうがないよな、と自嘲する。


 ライリーはパッと、身を起こした。


「あの……さ、シャーロット。話したいことがあるんだけど……」


 言いにくそうにするライリーに、シャーロットは目を大きく見開き、ライリーが紡ぐ言葉一つも取りこぼさないように耳を傾けた。


「えっと、花にはおしべとめしべがあってね。それで、それがくっつかないと花の種ができないんだ。それでね、人間もおしべとめしべに似たようなものがあってね、」


 ライリーが言いにくそうに、それでも一生懸命に説明するのを見て、シャーロットはライリーに抱きついた。


「はい。存じております。私も、ライリー陛下とくっつきたいです……」


「……えっ?」


 ライリーの頭の中は「?」マークがグルグルしている。


 存じている……って、知ってるって……。


「えっ??? い、いいの?」

 慌てた様子で尋ねてくるライリーに、シャーロットは首を傾げる。


「? もちろんですわ。私はライリー陛下の妻ですもの。むしろ、ライリー陛下こそ、今まで赤ちゃんが欲しくないから私に触れないのかと思っていましたわ」


 なんてこった……。


 ライリーはベッドの上で項垂れた。

 今までの苦労は一体……。


「じゃ、この鉄壁の守りの夜着は?」

「鉄壁? あぁ、お腹を守る鉄壁の夜着のことですわね。お腹を壊したらいけないので、私はこの夜着がお気に入りなんですの。夜着がどうかしまして?」

「脱ぎたくないってことの表れじゃ」

「そんなことありませんわ。脱いでしまうのでしたら、その前に何を着ていても同じでしょ? でしたら、それまでも暖かくお腹を守っていた方がよろしいのではなくって?」


 シャーロットは夫婦生活について、メイドから話を聞きかじった程度である。

 どんなことをするかなんとなくわかっていても、誘うような夜着のことや、脱がせる男のロマンについては、全くわかっていない。

 脱ぐ時は、首元を緩めてバンザイをすればすぐに脱げると思っていた。


「は、ははははは……」


 力なく笑うライリーに、シャーロットはライリーの顔を覗き込んだ。


「ライリー陛下?」


 ひとしきり笑った後、ライリーは本当の笑顔をシャーロットに向けた。


「なんでもないよ、奥さん。オレはシャーロットが大好きだ」


 ポッと頬を染めてシャーロットも応える。


「私もライリー陛下が大好きですわ」


 そして2人はぎゅーっと抱きしめ合った。


 いいじゃないか。

 オレたちはオレたちはのペースで、オレたちなりの愛の育み方でいいんだ。


 普通ならここで、濃厚なキスをするところだが、ライリーは軽い触れるだけのキスをたくさんシャーロットに贈った。

 顔中に、首筋に、耳たぶに。


 くすぐったくて、クスクス笑うシャーロット。

 それを見て、幸せそうに、ライリーも笑う。


「はい、シャーロット。じゃあ、バンザーイ」


 素直に両手を上げるシャーロットを見て、ライリーはまたシャーロットを抱きしめた。






 *****************


 こっ、ここまではR-15で大丈夫ですよねっ?

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