4章 1
バタバタとした日常が過ぎ去り、ボナールにまた平和な日々が訪れる。
シャーロットは国内の改革に勤しみ、フレッドもまた、影になり日向になりシャーロットを支えていた。
シャーロットが城の庭園をガゼボから見ていると、フレッドが急いで走ってくる。
「シャーロットちゃん、前に掛け合わせの講義を聞いたろう? あの後掛け合わせをしてみたんだけど、花が咲いたんだ。白金の花びらに、すみれ色のグラデーションが入った花なんだ」
息を切らしてフレッドが言う。
「まあっ! 本当ですの? 是非見せてくださいな」
「もちろん! こっちだよ。早く早く!」
フレッドにしては珍しく、子どものような笑顔でシャーロットの手を引き走る。
いつも走り回っているシャーロットだからこそ、ついて行ける速度だ。
世の貴族のお姫様なら、ついて行けずに転んでいただろう。
もちろん、フレッドはシャーロットが転ばないように気をつけて走ってはいたが。
庭園の一角に、フレッドはシャーロットを連れてやってきた。
「見て、シャーロットちゃん。これだよ」
少年のように光り輝く笑顔で、フレッドは花を指差す。
「まあ……。信じられないくらい綺麗……」
フレッドが指差したのは、花びらの中心から外側にかけてすみれ色から白金へとグラデーションされた花だった。
「フレッド様、こんな色合いのお花、見たことありませんわ。お花の名前はなんと付けましたの?」
フレッドは嬉しそうに答える。
「シャーロットっていうんだ」
「え?」
「シャーロットちゃんを思って掛け合わせた花なんだよ。オレの、我が国の女王様シャーロット。花の名前は作る前から決めていたんだ」
白金の髪に、すみれ色の瞳。
フレッドは思った通りの花が咲き、とても満足していた。
だから、シャーロットが狼狽えるのが予想できなかったのだ。
シャーロットは頬を赤く染めて、じっとフレッドの瞳を見つめていた。
「あ……!」
やっと、シャーロットが顔を赤くしている意味を知る。
「いや、ごめん。勝手に名前をつけられて、困っちゃうよね。違う名前を考えるから、ちょっと待ってて」
どっと出てきた冷や汗を拭きながら、フレッドも自分のしたことの恥ずかしさを思い知り、顔を真っ赤に染めていた。
シャーロットはそっと、フレッドの服の裾を掴んだ。
「いいえ。いいです。他の名前なんて、考えないでください。とても嬉しいです。この花の名前は、シャーロットというんですね」
「……シャーロットちゃん」
二人は同じくらい顔を赤くして、同じように照れて笑った。
その日の夕方、シャーロットは日課のお祈りを捧げに大神殿を訪れていた。
王城の敷地内にある神殿にお祈りに行くのは、即位してからのシャーロットの日課だった。
いつものお祈りをした後、地下に眠っている父と母に報告をするように、小さな声で呟いた。
「お父様、お母様。今日は嬉しいことがあったんですの。フレッド様が、私をイメージしたお花を咲かせてくださったんですのよ。この前、エリシアから技術交流した成果が出て、とても嬉しいです。そして、その新しいお花の名前に、私の名前をつけてくださったのです。愛おしげに"シャーロット"と口にされたフレッド様に、嬉しさのあまりドキドキしてしまいましたわ」
ふふっと、一人で笑い出した時に、目の前を光が横切ったような気がしてあたりを見回すと、天窓から夕焼けの空が見えた。
気のせいかもしれないが、その空には薄っすらと虹が掛かっているような気がした。
*****************
すみません。
配分がうまく行かず、最終章はとても短く、4話の予定です。
8/3の朝が最終回になります。
あと少しですが、お楽しみいただけたら幸いです。




