3章 4
その夜は、ギルバートを招いて晩餐会が開かれた。
特別に、いつもなら料理の進み具合に合わせて持ってこられる料理を、一度にテーブルに並べて食事を取る方法にした。
全ての料理が出されているため、部屋のドアは閉められ、給仕に使用人が出入りすることもない。
「ギルバート様、席におつきになってくださいませ」
シャーロットはにこやかにギルバートに言う。
「シャーロット……これはいつぞやのわたしの真似だろう?」
「あ、覚えていらっしゃいましたか?」
ペロッとシャーロットは下を出す。
ギルバートはランバラルドからシャーロットが帰国するときに、同じようにテーブルに全ての料理を乗せて使用人の出入りを禁じ、侍女であるマリーとジュディ、騎士アーサーを同じ食卓に着かせ、みんなで晩餐を囲んだのだ。
本来、使用人と貴族が同じテーブルに着くことは許されないが故のことだった。
ギルバートが席に着くと、フレッドがマリー達を連れて部屋にやってきた。
そして、全員が席に着くと、晩餐会は始まった。
「へぇ、ギルバート様、シャーロットちゃんが帰国する時に、こんな粋なことしてたんだ」
フレッドが感心したように言う。
「シャーロットにとってマリー達は家族も同然だからな。それに、わたしもマリー達は同志でもある。同じ席で食事がしたかった」
ギルバートの頬が懐かしさで緩む。
「へぇ、なんの同志ですか?」
ギルバートとマリー達の過去のやり取りを知らないフレッドは、スープを口にしながらギルバートに視線を向けた。
「なんの? もちろん、シャーロットを見守る会の同志だ。シャーロットの失敗談を共有する組織だぞ」
「えっ!?」
それを聞いていたシャーロットが顔を上げる。
「なんのことですの? 私の失敗談ってなんですの!?」
「例えばだな。ランバラルドにいた頃は、いきがってジャガイモを剥き過ぎて料理長に怒られたことだろ。それから、ボナールに戻ってからは、いきなり侍女のお仕着せを着て厨房に現れて、ボナールの料理長に不審者として衛兵に突き出されたこととか」
「「はあっ?」」
シャーロットとフレッドが同時に声を上げる。
「シャーロットちゃん、そんなことしてたの?」
「どうしてボナールに帰ってからのことまでご存知なんですの!?」
ギルバートはニヤニヤと笑う。
「もちろん、同志がここにいるからだ」
ジュディが胸を張る。
「このジュディが、ギルバート様が安心なさるように、ボナールでの姫様をご報告させていただいておりました!」
マリーもすまし顔で言う。
「言われて恥ずかしいことをなさる姫様がいけないのではないかと」
アーサーまでもが、シャーロットの味方をしてくれない。
「ギルバート様も、姫様のことが心配なんだそうですよ。オレも一筆書きました。ギルバート様の胸のつかえを取るためです。仕方ないですよね」
「~~~フレッドさまぁ」
唯一の味方フレッドにシャーロットは目を潤ませて助けを求めた。
「う、(シャーロットちゃん可愛い……)まあ、ギルバート様もほどほどにしてあげてくださいね」
顔を赤くして言うフレッドに、ギルバートはあきれた声を出す。
「まったく。フレッドはシャーロットには甘いんだからな。やっぱり、マリー達がしっかり眼を光らせて指導しないといけないな」
「もぉっ! みんなして失礼ですわ!!」
顔を真っ赤にして怒るシャーロットを、みんな微笑ましく見つめていた。




