表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人質姫と忘れんぼ王子 番外編  作者: 雪野 結莉
IF フレッド様の人質姫

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/37

2章 6

 月の青白い光に照らされ横たわるシャーロットは、とても儚く見えて、フレッドは息をのんだ。


「ドレスがシワに……」

 体を起こそうとするも、ふらつくシャーロットをそのままベッドに沈める。

 額に手を充てると、やはり熱い。

「それどころじゃないでしょ? このまま毛布をかぶって寝ちゃいなよ」

「でも……」

「ドレスくらい、シワになったっていいじゃん。新しいドレスを買ってあげるよ」

 ベッドの端に腰掛けて、シャーロットを見下ろすフレッドは、とても優しい顔をしていた。


「ジュディちゃんに声をかけておくから、今日はゆっくり寝て疲れを取って。じゃ、また明日」

 フレッドが立ち上がろうとすると、シャーロットがフレッドの服の裾を掴む。

「……行かないで……側にいて。ずっと、ここに」


 フレッドはドキっとしたものの、もう一度ベッドに腰掛けてシャーロットを覗き込むと、スースー寝息を立てていた。

「うわ言か……」


 そっと裾に絡まるシャーロットの指をはずし、フレッドは部屋を出た。


 使用人棟に行き、ジュディの部屋を訪ねる。

 まだ眠る前だったジュディは、フレッドの呼び出しに快く応じ、シャーロットの元へと走って行った。


 シャーロットの私室に行くと、ジュディはすぐに寝室に入って行ったが、フレッドは応接室でソファに腰掛けた。

 フレッドはそのまま自分の部屋へ戻ろうか悩んだが、フレッドの服の裾を掴むシャーロットを思い出すと、シャーロットの私室から出て行くことができなかった。


 カチャ、と寝室のドアが開き、ジュディが顔を出した。


「フレッド様、姫様を着替えさせてお化粧も落としました。少し前から風邪気味だったんですけど、姫様は自分が聴かないと機関車の講義が聴けないからって、ちょっと無理してたんですよね。まったく……。甘えることを知らないんだから」

 ジュディは可愛い妹を見るように温かい目で、シャーロットの部屋の方に目をやった。


「熱はありますが、重病なほどではありません。わたしはこれで失礼しますね」

 フレッドに礼儀正しく腰を折るジュディに、フレッドは慌てて引き留めようとする。

「待って待って。熱があるんだよ?」

 具合の悪いシャーロットを、一人残して帰ろうとするジュディに、フレッドは待ったをかける。


「……そうですね。では、フレッド様、こちらに来てください」

 そう言ってジュディはフレッドを私室内にある、給仕スペースに連れて来る。

「はい、氷嚢。氷はこちらの保冷庫に入っています。今までの経験から、姫様の熱は朝には引いていると思いますが、もしこの後上がるようなことがあればこちらを使ってください。熱が高くないのに冷やしまくると逆効果ですから、おでこや首筋を触って確認してくださいね」

「……は?」

「では、わたしはこれで失礼します」

 ジュディはそう言うと、今度こそ一礼して部屋を出て行こうとする。


「いや、待って! ジュディちゃん、オレを残して行かないで」

「でも、わたし、もうやることありませんし」

「シャーロットちゃんについててよ!」

「だって、フレッド様がついていてくださるでしょう?」

「オレだって帰るよ! 寝室だぞ。オレが朝までいていいわけないじゃないか」


 ジュディは微笑んだ。

「どうしてですか? 宰相様ですよ? 女王の一大事に女王の私室に入ってもおかしくありませんよ。それに、この宮に特別な許可なく入れるのは、わたしと母と兄だけです。誰かに見られて、変な噂を立てられることもありません」


 フレッドにとって、ジュディの囁きは悪魔の囁きにも等しかった。

 自分の部屋へ戻らなければと思う反面、ジュディの言う通り、シャーロットについていたいと思う気持ちもある。


「では、フレッド様。わたしはこれで失礼いたします」

 今度こそ一礼し、ジュディは固まっているフレッドを残して、部屋を出て行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ