2章 2
シャーロットはハイネックだがデコルテ周りが白のレースで覆われ、胸から下は青い生地で切り返したチュールドレスを着ていた。
ジュディに髪を結ってもらい、マリーに化粧を施してもらう。
ドレッサーの前に座ったシャーロットは、鏡の中の自分を見て、マリーに言った。
「あ、マリー。今日は少し厚めにしてもらえないかしら」
何本ものブラシを手に、真剣にシャーロットの顔に向き合っているマリーは、不思議そうにシャーロットを見た。
「何故ですか?」
「ちょっと気分を変えてみたいの。エドワード様のエスコートだし」
「……くるくる真っ赤なほっぺになるように塗りましょうか」
マリーは嫌そうな顔をしてそう言った。
「どうしてよ!?」
「姫様、フレッド様と踊る時にお綺麗になられるのは構いませんが、どうして他の殿方と踊る時にいつもより濃いメイクになさるのですか」
マリーもフレッドの気持ちには気がついていた。
だからこそ、エドワードのエスコートの時に美しく装うシャーロットに不満があった。
「気心の知れたフレッド様ではないからよ。化粧は女の子の鎧ですもの」
ふぅ。とマリーはため息をつく。
「でしたら、お断りになればよろしかったのでは?」
「たまには、フレッド様にもパーティーを楽しんでいただきたいの」
「フレッド様はいつも姫様と出席なさって楽しそうでございましたよ」
不承不承マリーはシャーロットの顔にいつもより濃くパウダーやチークを塗った。
その間に別室に居たジュディがパタパタと走って来る。
「姫様~、アクセサリーはこちらでいいですかね?」
ジュディが持っていたケースを開けると、いつかフレッド様からいただいた、大振りのイエローダイヤが見えた。
「ジュディ、それは……」
「青い海に浮かぶ月ってイメージで、すごくいいワンポイントになりますよね!」
自信満々の笑顔を向けるジュディ。
「そうですね、姫様。夜会にはちょうどいいお洒落になりますね」
マリーもジュディの案に賛成した。
「そ、そうかしらね」
なんとなく、フレッドからもらったものを身につけることを躊躇したシャーロットだったが、マリー親娘の笑顔には何も言えず、そのまま頷いたのだった。
日も暮れた頃、王家の居室エリアを出たところにある中庭で、エドワードはシャーロットを待っていた。
両隣をマリーとジュディ、後ろにアーサーを従えてやってきたシャーロットは、輝くばかりの美しさだった。
いつもは薄化粧なのだが、今夜はしっかりとアイラインも引き、整った顔立ちを強調しているが、ハイネックに肘まであるグローブをつけ、肌は最小限しか見せておらず、清楚な雰囲気を醸し出している。
「シャーロット陛下、思わず見惚れてしまいました。こんなに美しい方をエスコートできるなんて、わたしはなんと幸せ者なのでしょう」
エドワードも盛装をして、青い瞳を輝かせ、シャーロットの隣に並んでも見劣りしない凛々しさだった。
「リリー様は、ちゃんとパートナーの方といらっしゃいますか?」
シャーロットは本来ならエドワードがエスコートするはずのリリーを心配していた。
「リリーは聴講生からお誘いがあったので、その方ともう会場に入っていると思いますよ」
「そうですか。それならよかったです」
シャーロットはエドワードに差し出された腕に、そっと手を添えた。
「では、シャーロット陛下。参りましょう」
「はい」
マリーたち3人は、ライリーでもフレッドでもない男性にエスコートされるシャーロットを複雑な思いで見送ったのだった。




