彼氏、彼女。
小説というより、詩の形式で書いています。
彼女、ただ黙って、口をアの形で開いたまま、物言わず体育座り。
彼氏、エーっと叫んだまま、仁王立ち。
・・・二人の視線は明後日の方向へ。
二人が出会うのは、いつ?
彼女、魚のように室内をスイスイ泳いでいたのに。
彼氏、ゼンマイで巻かれたおもちゃのようにカタコト歩いていたのに。
・・・二人はやがて、止まる。
二人が動くのは、いつ?
彼女、彼氏の存在を無視し始める。
彼氏、彼女の存在を意識し始める。
・・・彼女は彼氏の視線を避け、それでも彼氏は彼女を眼で追い続ける。
二人が見つめあえるのは、いつ?
彼女、ここが海ではなく、ただの何でもない部屋だと知る。
彼氏、ここにはゼンマイがないことを知る。
・・・二人は何も知らない。
二人が夢から覚めるのは、いつ?
彼女、自分が泳げないことを知る。
彼氏、自分がおもちゃだったことを知る。
・・・二人は絶望する。
二人のご主人様は、どこ?
彼女、ようやく自分が霊長類ヒト科所属であったことに気づく。
彼氏、ようやく自分が霊長類ヒト科所属であったことに気づく。
・・・二人はまたもや絶望する。
二人のご主人様は、どこ?
彼女、何かを探し始める。
彼氏、何かを求め始める。
・・・それでも二人は動けないまま。
二人が探し物を見つけるのは、いつ?
彼女、それが何なのかわかる。
彼氏、それがどこにあるのかわかる。
・・・それでも二人は動けないまま。
二人が自由意思決定権を知るのは、いつ?
彼女、アーアーと、声が出せるようになる。
彼氏、ギイコギイコと、体が軋まなくなる。
・・・二人は自分の意思で歩き出す。
二人が外の世界を知るのは、いつ?
彼女、ようやく彼氏の存在を認めるようになる。
彼氏、彼女が恋しくてたまらなくなる。
・・・二人はようやく、出会う。
二人が結ばれるのは、いつ?
彼女、彼氏を愛している。
彼氏、彼女を愛している。
・・・二人は愛し合っている。
二人がご主人様のもとへ戻るのは、いつ?