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愛のかたち

古い映画からイメージして書いてみました。

 いつもの朝、そしていつもの「カフェshion」

珈琲をゆっくり味わい、ほっとひと息つく。そしてパソコンに向かう。ここまでは相も変わらぬ詩織の日常である。しかし今日はかなり焦っているのだ。と言うのも、珍しく締め切りに追われていて、どうしても今日中に書き上げなくてはならない。そして急いで原稿を送らなければ間に合わないのだ。詩織は必然と自分を追い込み~物語の世界へと入っていった。



 梨香子は待ち合わせ時間6時ちょうどにレストランに着いた。まだ宏は来ていない様である。『変わっていない事を信じたい』梨香子は不安な心を落ち着けようと窓の外に目を向けた。もし二人が会えれば3年振りの再会となる。3年前の今日、梨香子の誕生日をふたりで祝った後、ふたりは別れたのだ。「もしお互いの気持ちが変わっていなければ、3年後に此処で会おう」と約束して。。。


二人の出会いは、梨香子が働いている旅行代理店であった。宏が国内旅行ツアーの申し込みに来て、その受付をしたのが梨香子だった。普通であれば、ただそれだけの事のだったのだが、、。その時宏がテーブルの上にうっかり書類を忘れていった。そしてそれを梨香子が届けた事がきっかけになり、二人は時々会ってお茶を飲むようになった。初めのうちは、ただ気の合う友達が出来たと思っていた。何故か二人は趣味も同じ映画鑑賞、食べ物の好みもイタリアンでワインと一緒、そして何より将来、定年後に田舎に移住して自然の中で暮らしたいという夢までが同じであったのだ。もしかして二人は逢うべくして会ったのだと思う程に、一緒に過ごす時間は増えていった。そうして会っているうちに、自然と男と女として真剣に愛し合うようになったのである。本来は何も問題は無い筈だった。ただその時に、既に二人とも結婚していた事を除けば、。


その時の梨香子は結婚5年目、公務員の夫と2人暮らし、子供はいない。高校の同級生であった。特別何か不満があった訳では無い。ただ、子供を欲しがらない夫への気持ちが、だんだん変わっていくのを感じていた。

宏の結婚も同じ5年前であった。妻は同じ会社の3年後輩で現在は専業主婦。趣味のフラワーアレンジメント教室に夢中で、先々には講師になりたいと言っているそうだ。宏の方もまた、妻に対して何か不満があったと言う事も無かったようだ。

そんな二人が偶然にも出逢ってしまった。お互いにそれを知った時にはもう、どうしても離れられなくなっていた。だから敢えてその事には触れず、知らない振りをしながら会い続けたのである。


そうしてそのまま1年が過ぎた。ふたりの気持ちは何も変わらなかった。けれども、やはりお互いの家庭を壊してまで、一緒に生きようとするには、責任感があり過ぎたのである。そして何度も話し合った結果、結局ふたりは別れる道を選んだ。そしてその時交わした約束が、、

『もし、3年経っても気持ちが変わらなかったら、そしてふたりで新しく人生を始めたいと思ったのなら、このレストランで会おう。』っと、、。


あれから3年、梨香子は夫と更に気持ちがすれ違い、もう修復は難しくなっていた。そして、、この3年と云うもの、宏を忘れた事は無かった。だから戸惑いはあったものの、今日、このレストランにやって来たのである。

1時間が経って7時になった。まだ宏は来ない。

『3年が経った。その間に何があってもおかしくない。だから、、宏は来ないかもしれない、たとえ来なくても、、、。でも、後1時間だけ、1時間だけ待ってみよう。それで駄目なら、、今度は本当のお別れをして帰ろう。』

梨香子はそう思って、また窓の外を眺めた。





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