第7話 自家発電に際して
あれから1ヶ月、俺は1日3回、規則正しい食生活のようなペースで自家発電を続けていた。
しかしあれ以降、意識は飛ぶものの、並行世界に行くことはなくなっていた。
あれはやはり夢だったのか?いやいや、そんなわけが無い。あんなリアルな夢なんて存在するわけがない。
1回きりの不思議な体験として片付けられるのだろうか。
誰かに話したとしても、自家発電のし過ぎで頭がショートしてるなんて言われてバカにされるだけだ。ただあの体験は決して忘れることはないだろう。
俺は無意識にあの体験をもう1度味わいたいなんて思っていた。あんな体験をしたくないから頻度を抑えていたのに。
しかしよく良く考えてみれば自家発電すれば元の世界に戻れるのだ。それならば存分に並行世界を体験した後に戻ればいいだけだ。
異常な性欲をここで使わなければどこで使うのだ。逆に使い道はそこしかないのではないか。
「あのー、すみません」
俺は客の一言で我に返った。そうだ、俺はバイト中だった。俺は気を取り直し、客が買った弁当やら酒やらをレジで打ちながら、今日は何だか一層性欲があるな、と思っていた。
バイトが終わり、帰ろうとしていた俺はシフトが同じ子に話しかけられた。
あまり人と話すことのない俺が唯一話す同期で入った子で、俺の志望校であった大学に通っている子だ。今年で2回生だったかな?
「あの、夏さん。昨日、お誕生日でしたよね?あの、おめでとうございます!」
あぁ、そうだ、そういえば昨日は俺の誕生日だったのだ。あれから1ヶ月か、早いもんだな。
「ありがとう、山登さん」
と笑顔を出来るだけ心がけながら返した。コンビニバイトを初めてから表情を作るのは少し得意になった。
ともあれ、こんなことを言われたのは久しぶりだったので、スパーキングしそうだった。何がとは言わないが。
俺は久しぶりに気分良く家に帰りセットポジションについた。今日の出来事があったので、自然と脳裏に山登さんが浮かんできた。最低だと思っていても、手が止まらない。あぁ、性欲よ、恐るべし。
今日はあっちの世界に行けるだろうか。ふとそんなことが頭をよぎる。
今日は一層早く放電してしまいそうだ。運動エネルギーが増加していく。
うっ…!
意識が飛んだ。
意識が戻る。今日も失敗か?周りを見渡す。暗くてあまり見えない。
俺はとりあえずと、起き上がる。
俺は驚愕した。
俺の隣には女性が寝ていたのだ。
来た。ついに来たのだ。俺はまた違う並行世界のだ。