第3話 嫌な予感
今とても不思議なことが起きているのだ。
俺は生まれ変わった(?)ようなのだ。
・・・いや、俺はまだ死んでいないはずだ。
自家発電も今日は1回目だったし、発電しすぎて死ぬなんてこともないはずだ。
ちなみに俺はお盛んだった高校卒業後あたりに1回、発電のしすぎで死にかけたことがある。流石に今は治まってきてはいるが、十分に異常な性欲である。
兎にも角にも、俺はこの人物についてもっと知る必要があるようだ。
しかしこの人物は何日風呂に入っていないのだろうか。とりあえずシャワーを浴びてスッキリしてから考えるとするか。
そう思い、クローゼットを開けると黒い服しかなく、下着も2着くらいしかなかった。不潔なニートって何もいいところがないじゃないか…。
俺は山田弘に呆れながら下着と黒いTシャツを取り風呂場へ向かおうとしたその時、奥に小さめのクローゼットケースがあるのに気がついた。
これは至極不自然なことである。なぜならば他にハンコなどが入った引き出しがあるからである。
それなのに、クローゼットの奥に、言わば隠すように置かれているクローゼットケースは、何か大切な、人に見られてはいけないようなものでも入っているのかもしれない。いや、入ってなければおかしいのだ。
まあ、おそらくあるとしても通帳だろうが。残金などはこれからのために把握しておかなければならないだろうと思い、恐る恐る開けてみると、そこにはやはり通帳があったが、その下に何やら袋に包まれたものがあった。
その袋を開けると封筒が2つ、そして卒業アルバムが出てきた。
2つの封筒も気になるが、それ以上に気になったのは卒業アルバムである。なぜそんなに厳重に、隠すように閉まっておくのだろうか。
卒業アルバムくらいなら外の引き出しに入れていてもいいくらいだと思うが、そんなに山田弘にとって卒業アルバムは見られたら恥ずかしいものなのだろうか。
それならば実家に置いていくなり、捨てるなりしても良いと思うのだが。
しかしいくら恥ずかしくても思い出はそう簡単に捨てられないよな。うんうん。
卒業アルバムは小中高のものがあったが、俺はそれらを見て目を疑った。どうやら山田弘は小中高と、俺と同じ学校に通っていたらしいのだ。
そして卒業年度をみるに俺と同じ学年だったらしい。
しかし山田弘なんて名前は覚えていない。それに小中高と一緒だったヤツはいくらなんでも覚えているはずだ。しかも高校に至っては地元を離れた高校に通っていたのだ。
俺は現在に1番近い頃の、と思い高校のアルバムを手に取り恐る恐る開いた。
そこには見覚えのある校舎や先生の写真ばかりであった。
生徒写真の一覧を見てみる。確か俺は6組まである中で、3組だったはずだ。
まずは山田弘を探してみる。同じクラスであったら流石に覚えているはずだから関わりの無い他のクラスを探してみよう。
だが3組以外の5クラスを探しても山田弘なんてヤツはいなかった。ならば3組なのだろうか。3組を開いてみる。
しかし3組にも山田弘はいなかった。
これはおかしい。もちろん俺の写真はあった。何かがおかしい。なぜだろう。苗字が変わったのか?と思い、「弘」を探したが、他の小中のアルバムを見ても向風夏はいても山田弘は愚か、弘さえいないのだ。
不思議に思いながらも、ふと、封筒の中身も気になり出した。封筒には何も書かれていない。ますます気になり封筒から中身を取り出す。
その中からは保険証と免許証がそれぞれ出てきた。
それらを見て俺はとてつもなく大きな驚きと同時に恐怖を感じた。
保険証、免許証には「向風夏」と書かれていたのだ。
一体全体どうなっているのだろうか。なぜ山田弘が、全くの別人が、俺の保険証や免許証、俺と同じ卒アルを持っているのだろうか。
俺は何だか嫌な予感がしていた。というか当たっているだろう。
ひとまず交番に向かってみる。そして交番前に貼られている指名手配犯の顔写真を順々に見ていく。神灯組とかいう危険な組織に所属し、連続殺人事件を起こしニュースを騒がせた人達の見慣れた顔などが掲載されている。さらに見ていく。
すると、ビンゴだ。
俺が、向風夏が、強姦罪で指名手配されていたのだ。