そろそろ入学式 入学3日前
婚約は一度もないですが、振られた回数4回。そして振られた方々があまりにも有名な方ばかりで、影での私の2つ名は「失恋男令嬢」…不愉快ですわー。
そういえば、我が家について話ていなかったですね。
我が家は昔からの騎士の家系で、国の建国から優秀な騎士を輩出、また長きにわたり騎士団長を務めてきた家柄でございますの。
私には1つ下に弟がいるのですが、弟も来年の成人後には騎士団へ入隊予定です。
昔からお爺様にも良く言われたものです…「クラリスが男児であったならどれだけ優秀な騎士団長になったことか!」…と。
まあ、弟もとても剣技に関してズバ抜けていましたので私も女がてらに騎士団長などにならなくて済んだのですけれど。
日差しが暖かいテラスで1人、昔のお爺様とお父様のしごきを思い出していましたら、メイドのマリーがやって来るのが見えました。
何かしら?
「お嬢様。リリアン様がいらっしゃっております。」
「まあ、リリアンが?通して構わなくてよ。」
「おう。そういうと思ったからもう来てるぞ。」
マリーの後ろからひょこっと顔を出した薄水色の髪の毛に零れ落ちそうな大きなブルーの瞳の美少女がこちらに手を振ってきた。
「あらあら、相変わらず可愛いわね。リリアン嬢。」
「ぶっ殺すぞ!俺は男だってーの!てかまだ気にしてんのかよ…」
気にする?うふふなんのーこーとーかーしらー。
そう彼はれっきとした男性。見た目完全にかよわい系の美少女だが、声はたしかに低い。
成長期とのことだがまだ160センチに満たない身長ははてさてどこまで伸びるのか?
本当に可愛くて羨ましい…なんて言っても彼は私が振られた4人の方々から一度求婚されているのだ。
そう、私を男の子だと思っていたようにリリアンを女の子と勘違いをして告白をしているのだ。
そんなリリアンは幼少期その可愛さとあまりの求婚の数から10歳まで女子と間違われ続け、2つ名は魅惑の妖精。なんだそれ。貴族男子基本アホですわー。
「うふふ。リリアンのことは気にしてないですわ。アホがアホなことしてただけだしな。お前は悪くないよ。」
「おい…素が出てんぞ。」
「あら!いけませんわ!」
「お前は本当に変わらねえよなあ…ていうかよ、明日のあいつら主催の茶会お前も行くだろ?どーせ"失恋男令嬢"様は怖くて1人じゃ行けないと思うから、一緒に行ってやるよ。」
「あら、"魅惑の妖精様"のエスコートだなんて光栄ですわー」
「…お前は本当に…はあー。もういいや。てかそのケーキ俺にも食わせて。それお前の新作だろ?」
「もちろんですわ!味の感想お聞かせくださいませね!」
私、基本的にはいつも気をつけておりますが、たまーにお爺様仕込みの男性口調が出てしまいますの。あの地獄の騎士修行ですもの。仕方ない仕方ない…ですわ!
ですが!10歳から血のにじむ思いで英才教育を受けてきた私はその器用さで、今ではお料理にも手を出しているのです。
我が家は貴族で名門ですが、最悪もし嫁に行けなくてもいいように私副業として城下町でカフェを数店舗経営しておりますの。
カフェ・ド・アリス
今では貴族の方にもお忍びで来ていただけるようになり、売上も上々。他にも副業しておりますが、それはまた別の機会に。
「お!美味い!お前は本当に良い意味でも悪い意味でも器用だよなあ。」
「あら?うふふ。なんですのその言い方?首に剣突きつけられながら、腹に一発入れられたいんですの?」
「こえーよ。褒めてんだよ。」
楽しく談笑していますが、かたや大女、かたや美少女…なんだか絵面がシュールですわー。
「あ。てか明日のパーティーはカイルの奴の家らしいけど大丈夫か?」
カイル…あの泣き虫天使様か…
「…行きたくねー…」
「いや、でもまあ入学前の顔合わせの意味もあるようだからそれは無理だと思うぜ。いつもならお互い参加しないか、他国のパーティーだけ行くけどよ。今回は我慢しろ。」
「…リリアンのばかやろう」
「はいはい。だから一緒に行ってやるから。頑張ろーぜ。」
自分より低い位置から頭をよしよしされる。
子供扱いはやーめーろーでーすーわー。
はあ。憂鬱です。