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ポラリスの歌声  作者: 通り雨
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明かされた秘密

二日後、俺たちは櫻井さんに事務所に呼び出された。先日話に上がっていたセットリストについて、詳細な話がしたいという。言われなくてもこちらで勝手にするけれど、今俺がシュンと連絡が取りづらいことを考えるとありがたい話でもある。今日は珍しく五分前に着いたが、部屋に入ると他のメンバーはもうすでに集まっていた。一応挨拶したが、全員何だか生返事だ。どうしようかと手持ち無沙汰にしている俺を見かねて櫻井さんが目で座るように促す。妙な居心地の悪さを感じながら、席に着いた。するとすぐに櫻井さんから話を切り出してきた。

 「集まってもらったのは他でもない、次のライブツアーのセットリストについて話すためだ。いつもはアルバム作った後のツアーだからだいたいそこらへんから選べばいいんだろうけど、一応今回はベストアルバムってことなんでね。ちょっと勝手が違うと思うんだ。それに、気になることが一つあってね。」

ここで、一旦言葉を切ってこちらを見る。俺たちは、全員黙ったままだ。おかしい。いつもなら、ここらでカツキあたりが何か茶化すようなところなのに、何で誰も喋らない?

 「それは他でもない、この前のファンへのリクエストアンケートで一位になった“あの曲”だ。別に題名を言わなくても分かるだろう。君たち自身が一番よくわかっているはずだ。なぜなら君達のメジャーデビュー曲であり、文字通り『出世作』なんだからな。しかし、君達の過去のライブを遡って見てもこの曲を歌った形跡はない。ベストアルバムにさえ収録していない。これは不自然だよ。別に過去の栄光にすがりたくないとかいう斜に構えるようなバンドじゃないだろう、君たちは?しかも、どうもメロディーのつくりが他の曲とは違う。それでハマちゃんには悪いけど、他のメンバーには少し先に来てもらって理由を聞いたんだ。」

 俺は思わず他のメンバーの方を振り返った。三人が一様に目を逸らす。おいおい、何だ?俺の知らないことでもあるのか?

 「私から言っても構わないのか?」

 櫻井さんがそう聞くと、シュンがうつむいたまま頷く。それを見て、櫻井さんはこちらを見た。

 「あの曲を作曲したのは実はシュン君じゃあないんだ。」

 「えっ。」

 思わず声が出てしまった。

 「そ、そんなはずがないですよ、だってこのバンドの曲は全部シュンが作曲しているんすよ?誰が他に書いたっていうんですか、あんなセンスの塊みたいなメロディー?普通の人には書けないっすよ。適当なことを言わないでください。」

 俺は気がついたら櫻井さんの胸ぐらを掴んでいた。

 「浜崎君、落ち着いてくれ。シュン君が言っているんだから、それはまぎれもない事実だ。そして、作曲したのは外部のメンバーではない。作詞担当の藤川君だ。」

 は、ハヤトが?そんな、そんなはずは…。呆然としていると、ハヤトが済まなそうにこっちを見て言った。

 「いや、あのさ、あの時夏のオーディションで新曲を2曲ほどやろうってことになっただろ?それで遊び心でさ、シュンと俺で別々に一曲ずつ作詞作曲をしようってことになったんだ。一曲全部一人の手で作るっていうの一度してみたかったし、何よりシュンの作曲を俺が待つ時間が惜しかったからな、期限も迫ってたし。それで、作ったのがあの曲だ。」

 そこで、シュンが言葉をつなぐ。

 「それでさ、二曲とも四人いるときに出したんだけど、『あの曲』の方をハマちゃんが絶賛してさ、やっぱシュンのメロディーは天才だとか言って。あんまりに褒めるもんだから、実は僕が作ったんじゃないって言い出しづらくなってしまって。」

 そういえば、そうだった。2曲聞かされた俺は片方はいつもの感じだな、ぐらいにしか思わなかったんだけど、『あの曲』に関しては何か全く違うものを感じとったんだよな。それで無茶苦茶興奮して褒めちぎった覚えがある。でも、それは理由にはならない。

 「ということは、俺を今まで騙してたっていうのか。」

 シュンは言いづらそうにしながらもこちらを見据えた。

 「騙そうなんていうつもりはなかったんだ。ただ、シュンに本当のことを言わないまま、あの曲を使うのはなにか違う気がして、それでメジャーデビューしてからあの曲を使わないことに決めたんだ。」

 既に、シュンの声は消え入りそうになっている。そこをハヤトがつなぐ。

 「シュンはハマちゃんが自分に憧れているっていうことがわかってた。だからこそ、言い出しづらかったんだ。それはわかってほしい。」

 でも、それでも……。

 「騙したってことには変わりないじゃないか、そんなの。綺麗事を言ったって。もしかしてカツキも知ってたのか?」

 カツキもうつむいたままごめん、という。

 「そんな、そんなの、俺一人だけメンバーの中でハブるって、そんなのありかよ、俺は、俺はそんなの認めないからなっ!」

 俺はそのまま荷物を机からひったくって出て行こうとする。その背に櫻井さんが声を投げつける。

 「君は、そうやって無責任に逃げるのか、シュン君に自分の幻想を押し付けておいて、自分は悩んでいる仲間に手を差し伸べることもしなかったのに。」

 「うるさいよ、あんたは何も知らないだろう。」

 俺は振り返ることなく、部屋を出る。その後ろから、櫻井さんが「君は子供だよ。」と呟いた気がした。


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