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また、布団に入れてほしいといってきた!

(11月第4水曜日)

11月の終わりはずっと雨が降っている。秋から冬に移る冷たい雨、山茶花梅雨だ。今日はまだ水曜日、寒い1日だった。しかも外勤をして関連会社で打合せをして簡単な懇親会もあった。


雨に濡れて遅くなって帰ってきた。理奈には遅くなるので食事はパスと昼頃にメールで伝えていた。


家に着くと、もう10時を過ぎていて、リビングに明かりがついていたが、理奈はもう自分の部屋に入って休んでいた。すぐにお風呂に入った。


風呂上がりにスポーツドリンクを飲んで、自分の部屋で寝転んだ。今日は疲れた。理奈はどうしているんだろう。いつもは遅く帰っても出迎えてくれるのに、今日は出てこなかった。


眠っているのか、身体の調子でも悪いのかと少し心配になる。でも、眠っていると悪いので、声をかけるのを止めてこのままにしておこう。


うとうとと眠りかけたころ、ドアをノックする。


「理奈さんか?」


「はい、入ってもいいですか?」


理奈が僕に部屋に入りたいって、どういうことだろう。前に二度あったきりだったけど、きっと何かあったんだ。


「いいけど、大丈夫?」


理奈がドアを開けて入ってきた。パジャマ姿だ。近くに来るといい匂いがする。すぐに起上って、布団の上に座ると、理奈も少し離れて座った。


「一緒に寝てもいいですか?」


「どうしたの? 何かあったのか? 身体の具合でも悪いのか?」


「いいえ、そばにいたくて」


「もちろん、いいよ、じゃあ入って」


布団をまくり上げて横になって、理奈にここへと隣に場所をあけた。理奈はゆっくり横になるとすぐに僕に抱きついて来た。こんなことはもう想定外で戸惑うばかりだ。


こちらが意識して理奈を見ている時なら心に準備ができているが、今の場合は戸惑うばかりだ。


抱き締めることを忘れていた。すぐにしっかり抱き締める。ようやくいい感じだと思うゆとりができてきた。


このまますぐにと言う訳にはいかないことはこれまでの経験から良く分かっている。抱き締めると理奈はもう身体を硬くしている。


「理奈さん、無理することはないのですよ。どうしたのですか?」


「一人で亮さんを待っていると、また、風俗に行ったのかもしれないと思って、申し訳ない気持ちと悲しい気持ちでやりきれなくなって、帰りを待っていました」


「理奈さんらしくないね。でも今日は行っていない。仕事で関連会社まで出かけて懇親会もあって帰りが遅くなった」


「私、本当はとても寂しがりやなんです。亮さんの前では強がって見せているだけです」


「会社で何かあったのか? 相談にのるけど」


「いやなことと言うほどではありませんが、時々あるようなことです。それもあって、お天気も悪いし、少し気が滅入っていたのかもしれません。このままここにいてもいいですか? でも今までと同じで抱き締めるだけにしてもらえますか?」


「理奈さんの言う通りにする。抱き締めて寝られるなんて、それだけで嬉しいから」


「じゃあ、お願いします」


「じゃあ、やっぱり後ろから抱き締めることにしよう。その方が眠りやすいと思う」


「そうですね」


「少し前かがみで丸まってみて、僕がそれを包み込むように抱いてあげる。理奈さんもその方が楽ちんだと思うよ」


「確かにそうですね。それに背中が温かくて」


「じゃあ、お休み」


「目が冴えてすぐには眠れません。何か話してください。私を寝かせる時に父はよくお話しをしてくれました」


「じゃあ、今思っていることを話そうか。今が一番良い時だってこと。いつだって今が一番いい時といつも思うことにしているし、本当に今が一番だと思う。だって、理奈さんをこうして抱いて寝られるから」


「昨日はどうだったんですか?」


「昨日はハグしたときに嬉しそうに笑ってくれた」


「一昨日は?」


「コーヒーがとっても美味しいと言ってくれた。その時も今が一番と思った。昨日の今は昨日しかない。今日の今は今日しかない」


「そんなに私のことを思ってくれているんですか?」


「ようやく巡り会えた大事なお嫁さんだからね」


「入籍していませんが、それに」


「それはもうなるようにしかならないと思い始めている。少しずつだけど気心が通じ合っているし、一緒に暮らしてくれているのだから、そのうちに時間が解決してくれると思っている」


「ありがとうございます。一緒に寝させてもらってよかったです。おやすみなさい」


「おやすみ」


理奈はしばらく足を動かして僕の毛むくじゃらの足の感触を確かめていた。足が動かなくなったと思ったら眠ったみたいだった。


今は緊張することもなく僕を信じて眠っている。本当は押さえつけてでも縛り付けてでも僕のものにしてしまいたい。でもそんなことをしたら理奈は僕の元を去るだろう。理奈はそんな女だ。


朝、目が覚めると、理奈はもう布団の中にいなかった。


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