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会場

 ちょっと、ちょっとあなた。新しく来られた方ですよね。


 ちょっと聞いてくれませんか、私がこんなことになっちゃった理由を。とにかく誰かに話したくて話したくて、しょうがないんです。


 そうですか、聞いてくださいますか。ありがとうございます。騒がしくって、すみませんね。いやいやそれにしても、まさかこんなことになるなんてねえ。




 半年ほど前、うちに葉書が届きましてね。同窓会に呼ばれたんですよ。中学校の同窓会なんですけれどもね。


 私も初めは行くつもりで、そう返事を送ったんですよ。けれど、わけあって「やっぱり嫌だ」って言ったんです。しかし、相手が悪かった。幹事の森山ってやつなんですけどね。


 森山は、人一倍、いや二倍も三倍も、責任感が強い男でしてね。いったん引き受けたことは、強引にでも最後までやり通すんですよ。


 そうですね、たとえば、中学の体育大会のときの話なんですが、森山が応援合戦の団長をやることになりまして。


 そのときに、先生が森山に「がんばって応援して、優勝させてくれよ」なんて言っちゃったもんですから、もう大変。森山のやつ、「まかせとけ」って、それはもう張り切って、張り切って。


 毎日、朝は五時から、放課後は夜の九時まで、猛練習させられてしまいました。ええ、まあ、そこまでやった応援の甲斐あってか、優勝できましたけれども。


 森山ってやつは、そんなふうに、とにかく異様なほどに責任感が強い野郎なんですよ。周りがあきれかえるほどにね。


 そういうわけで、森山が今回の同窓会の幹事に選ばれたんです。責任感が強いあいつなら、何があっても、絶対に全員集めてくれるだろうってことで。そうですね、人がなかなか集まりにくい同窓会なんてもののまとめ役には、うってつけの人間です。


 それでですね、さっき言ったとおり、私は断ったんですよ。困るって言ってね。


 ですが、だめでした。なにしろ、責任感の強いやつですから。あの強引さときたら、本当に参っちゃいますよ。私もね、もっと怒っていいはずなんですが、なんか一周回っちゃって、もはや苦笑いです。


 そうしていざ来てみると、たしかに全員集まっていました。ええ、一人残らずです。さすがは森山ですねえ。


 あっ、ほら、あそこの美人、見えますか。中学のときのアイドルでミヨちゃんっていうんですが、そのミヨちゃんと喋っているのが森山ですよ。言い忘れていましたが、今まさにその同窓会の真っ最中でして。こんな何もないところですがね、それでもこうして集まって騒いでいるんだから、いちおう、同窓会ということになるんでしょうね。同窓会にしては、みんな苦笑いですけれども。


 それにしてもあいつ、責任を果たせたからって、嬉しそうにしちゃって、まぁ。


 ああ、私が嫌がっていた理由、お分かりいただけましたか。そう、そうなんです。


 森山の野郎、幹事に決まってからしばらくして交通事故で死んだんですが、「同窓会だけは死んでも開いてみせる」なんて言って、嫌がる私たちをこっちの世界にむりやり……。

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