94/309
3話
海水浴客用の駐車場の車とバイクを停め、三人は防波堤を越えて砂浜に立った。思った通り、海水浴客はすでにまばらだった。
海の家もそろそろ閉店の時間らしく、外に出していた売り物の浮き輪なんかを片付けている。
「いやーな感じは相変わらずですね」
「密集度合いが増してる気もする」
むつと祐斗は、嫌そうな顔をしつつ昼間に見付けた、岩場の方に向かって歩きだした。
「むっちゃんが、やばいって言ってたのは何か分かる気がするな…気温は高いのに寒気がするよ」
颯介にも分かるようで、その腕には鳥肌がびっしりと立っていた。
「けど、何がいるの?」
鳥肌の立っている腕を擦りながら颯介が聞くと、むつと祐斗はそろって首を傾げた。
「分からない」
普段なら自信を持って仕事に臨んでいるむつだが、今回ばかりは不安なようだった。
「何だろうね」
むつがぎゅっと細長く布に包まれた物を握り締めるのが、颯介と祐斗にも見えていた。そんな物、日本刀を最初から持ち出さなくてはならない程なのかもしれない。
砂浜を踏みしめ歩いていく三人は、岩場が少なくなるにつれ、口数が減り真剣な表情になっていった。




