3話
紙袋から水着を取り出したむつは、値札タグを切りすぐに身に付けた。その上から服を着ると、昔もこんな事したな、と苦笑にも似た笑みを浮かべた。
先程、出掛けていた時とは違う服に着替え細長く布に包まれた物を持ち、ショルダーバッグを手に持った。普段使っている物ではなく、小さめの最小限の物しか入らないものだった。
忘れ物などないか確認し、眼鏡のレンズをおざなりに拭いて部屋を出た。
エレベーターで1階に降りるとすでに、颯介と祐斗は来ていて、ソファーに座ってむつを待っていた。
「やっぱ男の子は早いよね」
「まぁね、ってまた服も着替えたの?」
「そう、今度は仕事用に」
どうやってあるのか、むつの長く綺麗な髪の毛は肩あたりまでしかない。
「男みたいですね」
正直にも残念そうに祐斗が言うと、むつは少しだけ困ったように笑った。
今のむつは、カーキ色のカーゴパンツに黒のノースリーブと薄手のグレーのパーカーだった。ノースリーブがフィットしていて、身体のラインはしっかり分かるが、ぱっと見だと男の子のろうにも見える。
「動きやすいし、絡まれにくいよ」
「成る程ね。夜、女の子1人ってわかると絡んでくる男居そうだもんね」
颯介がそう言うとむつは頷いた。
三人はカードキーをフロントに預けると、それぞれ車とバイクに別れて乗り込み海に向かった。




