3話
「あ、バイク停めてくる」
ホテルに着くとむつはバイクの押しながら小走りに、駐車場の方に向かっていった。
「祐ちゃんや」
「はい?」
「何で、むっちゃんは祐ちゃんから、祐斗って呼ぶ用になったの?」
玄関前で紙袋を持たされた颯介は、むつの後ろ姿を見ながら祐斗に言った。
「あー何でですかね?ってか、湯野さんもそろそろ子供を呼ぶみたいに、祐ちゃんてやめてくださいよ」
「なら、祐斗君?谷代?俺も名前で呼んで貰いたいなぁ」
「えっ‼颯介さんってですか?」
颯介は祐斗の方を向き、ゆるゆると首を振った。お前にじゃない、と言われてるのが分かった祐斗は苦笑いを浮かべた。
「そんくらい、むつさんに言ったらいいじゃないですか」
「言ってみようかな」
「不思議ですけど、元彼を先輩って呼んで、宮前さんを名前で呼んでますよね。何の違いなんでしょうね」
男二人がそんな会話をしていると、玄関の自動ドアが開いて後ろからむつがやってきた。
「お待た」
颯介に持たせていた紙袋をむつは、受け取りエレベーターの方に向かう。
「むっちゃん」
「はいはい?何?」
本当に言うのか、と祐斗は少しドキドキしながら颯介の言葉を待った。颯介はいつもの柔らかい雰囲気をそのままに、むつを真剣な目で見ている。




