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3話
むつはもう1つの紙袋を二人に見せた。颯介と祐斗は、顔を見合わせた。
「確認しときます?」
「露出がありすぎてもあれだし、ね」
見せられた紙袋を受け取ろうとした祐斗は、むつにぱちんと額を叩かれた。
「ふつーのだよ、ふつーの」
「普通ってスクール水着みたいなイメージしかないけど」
颯介は長い指を顎にあてて、そう呟いた。むつは、真剣そうに言う颯介を見て声を上げて笑った。
「あ、そう言えばホテル出た時に西原さんに会ったんですよ。あの人、真面目な人なんですね」
「真面目?」
水着をビニールに包み直しながら、祐斗は意味ありげにむつの方を見た。
「見落としがないようにってまた聞き込み行ったりしてたみたいですよ」
「へぇ」
むつはバイクを押してるにも関わらず、器用にポケットからタバコを出してくわえていた。
「灰皿あるんですか?」
「あるよ、けーたい灰皿ってのが…まぁ西原先輩は昔から真面目よ」
「そんな所が好きだった?」
ちゃかすように颯介が言うと、むつは顔をしかめた。だが、少し笑っていた。




