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2話
エレベーターが6階で止まると、むつはまた開ボタンを押して、みんなが降りるのを待った。
「篠田さん、バッグ。ありがとうございました…後は自分で運べますので」
篠田からバッグを受け取ると、むつは重たそうなバッグを肩にかけると、重みでか、少しよろめいた。ドアに手をつき支えるようにして、部屋の鍵を開けた。
「では、21時に」
篠田と冬四郎に頭を下げるとさっさと室内に入っていった。静かにドアが閉まり、カチャリと鍵のかける音がした。
冬四郎は少しの間、むつが入っていった部屋のドアを見ていたが、どうする事もなく部屋に入っていった。
「湯野さん、湯野さん。…昼飯どうしますか?むつさん部屋に入っちゃいましたし」
「むっちゃんは、少ししてから声かけようか。俺も汗流したいし」
祐斗はTシャツの襟を引っ張り、すんすんと臭いをかいで頷いた。海の方まで歩いた時にだいぶ汗をかいたせいか、少し臭うような気がした。




