2話
窓辺に居るむつの隣に颯介が並んだ。むつは少し背伸びをして、颯介にだけ聞こえるように言った。
「警察署なのに霊が1体も居ないの、おかしいと思わない?管狐も何にも興味わかないみたいで出てこないし…」
ヒールのあるパンプスで背伸びをするのはツラいのか、すとんっと踵を下ろした。
「気にしすぎ、かな?」
窓枠に肘を置き、頬杖をつくような姿勢をした颯介はちらっとむつを見た。
「むっちゃんの勘は…半々だよね」
「ですよねぇ」
颯介に寄りかかり、むつはくすくす笑った。むつが近くい居たせいか、名前を呼ばれたせいなのか、管狐が顔を出していた。
むつが、管狐の小さな頭を指で撫でていると西原が戻ってきた。両手でファイルを抱えるようにして持っていて、今にも崩れそうなのに気付いた冬四郎がすかさず、半分受け取った。
「面倒だから調書をそのまま持ってきました…部外者に見せるのはあれですが」
どんっとテーブルに置かれたファイルを冬四郎はさっそく捲って見ている。むつは冬四郎の隣からそのページをのぞいていた。
「むつ、これをどうする?」
上から声がして、むつは顔を上げた。久しぶりに近くで冬四郎を見た気がした。
「場所ごとに時間を書き足して、勿論。西原先輩、お願いね」
少し汗をかいている西原は、嫌そうな顔をしたが文句は言わなかった。
「むつ、人使い荒いぞ」
小声で冬四郎に注意されるも、むつは知らん顔していた。本人にそんなつもりはなかったらしく、少しだけ頬を膨らませていた。




