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2話
椅子に座ったむつは、氷の溶け出している麦茶を飲み、氷も口に入れてガリガリ噛んでいる。
コップを両手に持ったまま、ぼんやりと地図を眺めているむつを冬四郎は心配そうに見ていた。むつは冬四郎の視線に気付く事なく、祐斗の肩に頭を乗せるようにもたれ目を閉じた。
「むつさん、眠たいんですか?」
「んーちょっと、ここ涼しいし変なのいな、い…居ないね」
「あぁ、そう言えば何にも居ませんね」
むつは、目を開けて祐斗の肩から頭をあげるの勢いよく立ち上がった。
「篠田さんっ」
驚いていた篠田は名前を呼ばれ、慌てたように立ち上がった。悪戯が見付かった子供のようだと、祐斗は思った。
「署内を1周みて回りたい、うちの谷代を案内してやってください」
「えっ?俺?」
「だって、祐斗のが分かるじゃん。何にもしなくて良いから見て回ってきて、それだけで良い」
「えーもぅ分かりました…篠田さん、お願いします」
しぶしぶといった様子で祐斗と篠田が出ていくと、むつは窓辺に寄った。カーテンを開け外を眺めた。




