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2話
「夜、出直しだね」
「うん、後向こうがちょっと…ある程度の準備をしてもう1度みに行きたい。あと、足洗いたい」
近寄ってきた祐斗が笑った。
「砂浜歩きにくくて靴脱いだんですよ」
「成る程ね、準備をしてまで行かないとまずい感じなのかい?」
「何があるか分からないので。海水浴の客が少し減って、暗くなる前には見に行きたいですね」
祐斗の意見にむつは賛成なようで、頷くだけだった。
颯介は腕時計を見たが、まだ13時前だった。海水浴客が減るにしても15時頃からだろう。だが、平日とは言えど学生などは夏休みだし、社会人なんかが夕方から遊びに出てくる可能性もある。
「とりあえず…お昼ご飯でも食べますか?」
「そうだね…あの三人にはお帰り頂こうかね。宿泊場所を聞いてから」
むつは、口元に笑みをはいて篠田の方に向かっていった。
「むつさん、キャラぶれぶれですね」
「うん…愛想よくやるつもりなのか、宮前さんへの当て付けなのか」
颯介と祐斗は、ぼんやりと松の木の林を見ている冬四郎を哀れむように見た。