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2話
祐斗にそう言われ、むつは目を細めて岩場の方を見た。そして頷いた。
「けど、明るいうちじゃないと夜の方が動けなくなるし」
「そうですけど…むつさん、その靴じゃ動きにくくないですか?手ぶらだし」
「札と人形はある」
「紙でしょ?水には敵わないですよ」
「それもそうだね…1回戻ろうか。人が多すぎるってのもあるし」
二人は防波堤から降りた。冬四郎は二人の様子を見ていたが、何も言わなかった。来た道を戻ろうとする二人の後に続いていくだけだった。
松の木の林を抜け国道に出ると、すぐに颯介が近寄ってきた。
「どんな様子?」
「やばい様子、かな」
むつは汗で額に張り付いた髪の毛をかきあげた。そんなに動いたわけでもないのに、頬を伝って汗が流れる。
「こっちもある意味やばい様子。手懸かり全くなしだよ」
「ん?そっちは…」




