61/309
2話
外に出ると暑さと眩しさで、むつは思わずくらっとした。手の甲で光を遮るようにしつつ、しかめ面をするとそれを見ていた西原が笑った。
「相変わらず夏嫌いみたいだな、髪の毛も長いし」
むつの艶やかで長い髪を指でとくように西原が触っている。むつも嫌がるような素振りは見せない。
「羨ましい?」
「うるせぇ」
西原は若いにも関わらず、少しばかり額が広い。それを本人はそこまで気にしていないのだろう、むつと笑い合っている。
そんな二人のやり取りを冬四郎と篠田、颯介と祐斗は眺めていた。
「先輩って呼んでたけど…ただの先輩じゃないみたいだね」
颯介のその呟きに、祐斗と冬四郎が振り向いた。そう思ってはいても、口に出さないようにしていたのが、ありありと分かる反応だった。
山上から聞いていた篠田だけは、驚く事もなく、そんな男三人を見ている。
「うーん…むつさんはあーゆー男が好きなのかぁ」
祐斗は、うーん、うーんと唸っている。西原のどこが良いのか理解が出来ないのだろう。それに関しては、祐斗だけでなく他の男たちにも分かりはしなかった。