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2話
短い時間だったが、男とむつは二人だけの世界に居るかのように微笑みあっていた。先に我に返ったのは、むつだった。こほん、とわざとらしく咳ばらいをしてパイプ椅子に座った。
男も仕事中である事を思い出したのか、麦茶を置き終わると三人にそれぞれ名刺を渡した。西原 駿樹巡査と書かれている。
冬四郎は1番後ろの席に座り、篠田と西原はホワイトボードの前に立っている。
「えー、本日はお越し頂いてありがとうございます、私が篠田さんにご相談した所、よろず屋さんをご紹介して頂いたわけでして」
西原は緊張しているのか、何だか歯切れの悪い感じで話を始めた。
「どうお話したら良いものか…その、先週あたりからですが炎を纏った大きな車輪が国道で目撃されるようになりまして、私も通報を受けたりパトロールで見回って、本当に見たのですが…」
歯切れの悪さは、いまだに自分の目で見た事を信じられないから、なのかもしれない。




