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2話
ロビーのソファーでお待ちくださいと、受付で言われ三人は言われた通りに座って待っていると、篠田はすぐにやって来た。いつでも動けるように待っていてくれたようだ。
篠田は今日もしっかりとネクタイをしめ、ジャケットを着ている。にこやかな篠田の後ろには冬四郎も居た。今日は冬四郎もネクタイとジャケット姿だった。
「むつさん‼お待ちしてましたよ」
駆け寄ってきた篠田は、むつの手を取った。余程、待ちわびていたのか嬉しそうだった。むつも満更ではなさそうに笑顔を見せていたが、やんわりと手を離して1歩下がった。
「早速なんですが」
意気込んで話を始めようとする篠田を、冬四郎がやんわりと止めた。
「篠田さんロビーでは何ですし、部屋の方に案内してからの方が」
「あ、そうだな。どうぞ、ご案内します…こちらへ」
篠田がむつの腰に手を回してエスコートしようとすると、むつはさっと避けてにっこり笑った。