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2話
警察署の駐車場にバイクを停めるとむつは、ヘルメットをとり髪の毛をほどいた。たっぷりの髪の毛が、豊かに揺れた。祐斗はそんな様子に見とれていた。
「降りなよ」
くすっと笑われ、祐斗もおりてヘルメットを外した。少し遅れて颯介も到着した。むつは、颯介の車にヘルメットを二つとも入れると、大きなショルダーバッグからいつもの鞄を取り出した。
「むっちゃんの運転はどうだった?」
少しだけ疲れたような顔の祐斗を見て、颯介が苦笑いを浮かべていた。
「怖かったです」
「あら?安全運転したでしょ?あたしは楽しかったよ、初めて人を乗せたけど」
ずり落ちていた眼鏡を押し上げて、むつはジャケットの袖を折り曲げた。いつも斜め掛けにしている鞄の紐を短くすると、肩から下げた。そして、警察署の中に入っていく。
受付で名前を名乗り、篠田を呼んで貰う。