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2話
車に戻り、エンジンをかけいつでも出れるようにしていたが、むつのバイクのエンジン音が聞こえてこない。不思議に思った祐斗は、あっと声を上げた。
むつは若い男たちに囲まれていた。ナンパというやつだろうか。
「むつさん、大丈夫でしょうか?」
「面倒くさそうだよね…祐ちゃん行ってきて」
「どっちが、ですか?」
「どっちも。だから、早く行ってきて」
颯介にそう言われ祐斗はしぶしぶ車から降りて、むつの方に嫌々歩いていく。むつを囲っている男たちの合間をぬってむつの前まで行くと、仏頂面のむつが見えた。
颯介の言う通り面倒くさそうだった。たが、祐斗が見えるとむつは祐斗にとびっきりの笑顔を向けてきた。
「遅いよ」
かぽっとむつにヘルメットを被せられた祐斗は、追い立てられるようにバイクの後ろに乗せられた。