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2話
祐斗の意外そうな顔に颯介は笑った。
「そりゃあね」
「むつさんも?」
片手をハンドルに添えて、もう片手で顎を撫で颯介は唸った。
「あんまり、むっちゃんの昔の事って知らないんだよね。興味あるなら聞いてみたらいいよ」
颯介の運転するミニは、のびのびの走りつつも高速に入っていった。乱暴な運転もするが、こうやってのんびりと走らせている颯介の運転は上手いんだと祐斗は思っていた。
ふと、むつの運転はどうなんだろうと思った。性格が運転に出るんだとしたら、むつの運転は荒いのかもしれない。
高速に入るとあまり景色は変わらず、平坦でつまらないものだった。だが、平日なので空いていて走りやすそうだった。むつの姿は全く見えなかった。
しばらく走り続けていると、長いトンネルは差し掛かった。祐斗は無意識のうちに腹に力を入れていた。トンネルは、よく出るので心構えが必要だった。
思った通りに、上の方や壁際にぼんやりとした人の形をしたもやのようなモノが視えたりした。
颯介の襟元から顔を出している管狐も、それらに気付いてるのかいちいち、顔を向けて鼻を動かしたりしていた。




