2話
翌日、颯介と祐斗はいつも通りに出社すると、むつを待っていた。普段なら1番先に出社してくるのに珍しく遅い。
「寝坊かな?」
「むつさんに限ってそれは…」
二人が心配しながら待っていると、カツカツカツと規則正しいヒールの音が聞こえてきた。むつが来たようだ。
「おはよーございます」
長い髪の毛をお団子にし、大きいショルダーバッグを持ったむつが入ってきた。布に包まれた細長い物、日本刀もしっかりと持っていた。
「おはよ、遅かったね」
颯介が声をかけると、むつは照れたように笑った。
「暑いせいか寝付きが悪くて、ちょっと寝坊しちゃった」
そう言いつつ、荷物を置くとオフィスの奥にある倉庫に入っていった。倉庫から札と人形を出してくるとバッグに詰めた。
「そんな所に置いてたんですか?」
「うん、家だと何かねぇ…仕事気分抜けなさそうじゃん?」
「忘れ物ないなら出発しようか?今日は社長も出てこないし、戸締まりだけはちゃんとしておかないとね」
颯介に言われ、むつは倉庫に鍵をかけ、開いてる窓がないかチェックした。その間に祐斗はキッチンに入りガスの元栓の確認をした。
「ま、泥棒に入られても…盗られる様な物ないだろうけどね」
見も蓋もない颯介の言いように、むつと祐斗は顔を見合わせて笑った。