1話
気だるそうなむつは、胡座をかいている冬四郎の足を掴むと伸ばさせた。そして、太股あたりに顔を乗せた。
「甘ったれだな」
爪先の方に向けていた視線をちらっと冬四郎に向けたむつは、ごろんっと向きをかえて、腰の辺りに顔を埋めた。
「嫌いって言ったくせに」
拗ねたように言いつつも冬四郎は、優しくむつの頭をゆっくり撫でていた。
「うん、嫌い」
即答され頭を撫でていた手を止めて、冬四郎に苦笑いを浮かべるしかなかった。
「篠田さんって何者?」
冬四郎の手が止まると催促するように、むつは少しだけ頭を動かした。催促に応じるように、再び頭を撫でながら冬四郎は首を傾げた。
「篠田さんなぁ…あの人は、沼井どうこうってより好奇心と趣味の人だよ。山上さんの始めた仕事の噂って結構、内部では広がっててさ」
「趣味?」
気になったのか、むつは仰向けになり冬四郎を下から見ていた。
「そ、何だろうな。仕事出来て人望もあるのに残念にも…オカルト系が大好きでな、ほら、アメリカとか超能力捜査ってあるだろ?あれを日本でもやりたいみたいで、その一環で今回」
冬四郎の話を聞き、むつは納得した。車輪の話を始めた時の熱っぽさと、きらっきらした子供の様な目は、それでかと。