7話
パラソルが照り付ける日差しを遮っている下。むつは、ビーチチェアにゆったりと座って宇治金時味のかき氷を食べている。小豆に抹茶に練乳とかなり甘い仕上がりに、むつはご満悦だった。
「冷たいもんばっか食うから夏バテすんだよ」
隣に並んで座っている冬四郎は、昼間から缶ビールを片手に海を眺めていた。その海では、祐斗がスイカの絵柄のビニールボートに乗ってぷかぷかと浮いている。
「もう大丈夫だもん、たぶん」
人の少ない岩場に居るからか、管狐と釣瓶火はむつのかき氷を一緒に食べている。
「怪我も、もう良いのか?」
「ん、まぁそのうち治るでしょ…ちょっとずきずきするけどね」
篠田に殴られ腫れた頬には、大きな絆創膏が貼ってあり痛々しい。祐斗も颯介も身体は、痣だらけになっていた。だから、人の少ない岩場を選んだのだ。
「けど…まさかさ、こうやって休みが貰えるなんて思わなかったや。篠田さんに感謝だよね」
篠田本人がやった事ではないにしろ、篠田の記憶にはむつを殴り、祐斗と颯介に怪我を追わせた事が残っていたようだ。もちろん、むつに腕を切り落とされ折られた事もだが。だが、戻ってきた本人は怪我ひとつしていなかった。