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6話
三人が居た船の方から、幾筋もの光が上へ上へと昇っていく。そして、大きな光が見えた。それは、物凄いスピードで辺りを包み込んでいく。
眩しさに目が痛くなり、ぎゅっと目を閉じて耐えていた。光は瞼ごしにも見える気がした。暖かい風を感じたと思ったら、急に身体が浮くような感覚になった。
ふわふわとした感覚に、眠くなりそうになりながら、むつはそっと目を開けてみた。強い光はなくなり、淡く白い光が三人を取り巻いている。
そして、目の前には沢山の人の顔が、笑顔が見えた。今よりもずっと昔の、ふりるのついたドレスや羽根のついた帽子をかぶった女性に、はしゃぐ子供。それを見守るように側にいる男。それらはきっと、あの付喪神が見てきた思い出なのだろう。
港から港へ。沢山の人を笑顔にして、目的地に無事に運んでいた頃の楽しかった思い出だった。むつもほんの少しだけ笑った。そして、ゆっくりと目を閉じていった。
まだ、付喪神の思い出を見ていたかったが、再び目を開ける事は出来なかった。




