3/309
1話
来客があるにも関わらず、嫌味ったらしい言い方に祐斗はドギマギした。横で仕事をしている颯介を見ると、肩を小刻みに揺らして笑いを堪えていた。
余程の事でもあったのだろうか。来客である宮前 冬四郎とその連れが来た時に、お茶を出しに行ったが素っ気なく、ろくに挨拶もせずに戻って来たのだ。
立ち上がった山上が、大袈裟に肩を竦めて溜め息を吐いていた。
「むつ、良いから来なさい」
名前で呼ばれたむつは、嫌そうな顔を隠す事もなくしぶしぶ立ち上がると奥にある、ソファーに向かっていった。
近付いてきたむつに、山上が小声で
「喧嘩中でも仕事は仕事だ」
と言うのを聞き、むつはいつものうっすらと笑みを浮かべた仕事用の顔に戻ると、来客に会釈をして山上の隣に大人しく座った。