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6話
むつの見ている方向が、ぱっと明るくなった。釣瓶火が、ちゃんと火をつけてくれたようだ。
急いで戻ってきた釣瓶火は、むつの手の中で誉めて欲しそうにしている。そんな釣瓶火をみて、祐斗は鼻を鳴らした。
しばらく待っていると、炎が大きくなってきたのか、火柱が見えた。そして、ドンッと大きな破裂音がした。微かに火のついた木片がパラパラと降ってく。
むつが動く気なさそうに座ったままなのを見て、颯介と祐斗はむつを間に挟むようにして座った。
「むつさん、本体は何だったんですか?」
「フィギュアヘッド…船首についてる彫刻だったよ。航海の安全を願う女神像だった」
そっと掌を開いて、女神像の首から引きちぎった首飾りを見た。ちゃんと、むつの掌の中にある。
「そうですか…だから、霊を集めやすかったんですかね?女神像ってなんかすがれそうですし」
「そうだろうね」
祐斗の方を見る事なく、むつは炎だけをじっと見つめている。炎は勢いを弱める事なく燃え続けている。




