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6話
「喋ってる間にこいつら呼んだってわけ、性格悪いわ」
ぞろぞろと寄ってくる霊をむつは、押し退けるように甲板の中央に向かう。そう言えば、颯介がまだ出てきてない気がした。だが、今はそれどころじゃない。
「心中なんてごめんだわ」
むつは、無表情に迫ってくる霊たちの腹を蹴り、少しでも進む道を作ろうとするが数が多くてそう上手くいかない。何しろ、明かりになるものがないのだ。どこからどう来るのか全く、分からない。
後ろから髪をつかまれ、腕をうかまれするうちに動けなくなってきた。今は日本刀もない。力の方も空に近い。
腕を後ろから掴まれ、羽交い締めに近い状態のむつは、前から来る霊の顎を蹴った。しっかり当たったようで、痛そうな音がした。




