6話
むつは、そう言われてしまうと何も言い返せなかった。確かに、普通に会話をして、自分の意思で何かをして、その為に思考する。人と大差ないように思えた。だが、違う。
どう言えば、伝わるのか納得するのか、むつは考えてしまった。
「けど、けどさ。人は自分の都合だけで他者を殺めたり利用しないよ。いや、違うかな…確かに目的の為なら手段を選ばないし人を傷付ける事も厭わないかもしれない。あたしも、今あなたを傷付けてるもんね」
いつの間にか火が消えていたタバコをむつは、投げ捨てようとしたが、火が完全に消えているのを確認するとポケットに入れた。
「大差ないね。でも、誰かの為に何かを出来る人の方が多いと思うよ、人はね。古くなったら、使えなくなったら簡単に処分してしまうけど、それまではあなたも大切にして貰えたでしょ?」
何も言わない付喪神が心配になったのか、むつはより身を乗り出して付喪神になった女神像を見つめた。
「こうして、傷がなく綺麗なままなのは、人の手で手入れされて大切にされた証しなんじゃないの?自分を大切にしていた人間を傷付けるのが、あなたのしたかった事じゃないよね?」