290/309
6話
『煙たいわよ』
「あ、ごめん…タバコの話?それとも船内の話?」
『どっちもよ。わたしの船を燃やすなんて、尋常じゃないわね』
むつは煙いと言われても気にする様子はなく、タバコをふかしている。
「お互い様でしょ…そこから動けないの?」
『動けないわ。船と一体だもの』
女神像は少しだけ、目を動かした。色のないぼんやりとした白い固まりとしか、むつには見えない。
『だから、船を戻したのに…また人の手で壊されるのね。わたしも』
「航海中の事故で沈んだわけじゃなかったの?」
『違うわ。古くなったから、取り壊されて沈められたの。新しい船の方が速いらしいわ』
「それは…悲しい事だけど時代の変化だよ」
『えぇ、えぇ。役目を全うしたわ。でも、わたしは付喪神になったの、意思を持ってるのよ。人と同じはずよ』
意思を持ち考える事が出来る。人と付喪神は同じだと、この付喪神は思っているようだ。




