281/309
6話
「ちょっと‼祐斗、祐斗ってば」
むつは、祐斗の頬をぱしんっと叩いて肩を掴んで揺さぶっている。頭が前後にかくかくと揺れている。
「駄目、起きない」
あっさり諦めたむつが、ぱっと手を放すとごん、という音をたてて祐斗は再び床に倒れた。
篠田を片付ける方が先と思ったのか、むつは颯介の隣に並んだ。片腕がない状態で二人を相手にしようというのに、篠田に焦りはない。それどころか、うっすらと笑みを浮かべてさえいる。
「気持ちの悪い顔」
『おや、そうですか?なかなか、整った顔立ちだと思いますけど』
篠田は自分の顔をペタペタ触りながら、満足そうに微笑んでいる。
『そんな事より。大人しく、わたしの為に死んではくれませんか?船の修復に力も霊もかなり必要なのでね、また集めなくてはいけませんし』
ふいにむつは、篠田から視線を外して、ドアの方を向いた。そして、そちらに近付いていく。颯介も篠田もむつが何を思ったのかと、そっちに視線を向けた。
そして、むつはドアに手をかけると力づくで蝶番からドアを外した。ばきっ、めりっ、と音を立ててドアが廊下に落ちた。




