28/309
1話
「んー?ってか…といちゃんっランチメニュー頂戴よ」
呼ばれた戸井は、へらへらと笑いながらランチメニュー表を持ってきた。
「呑まないの?」
「呑まないの‼昼間よ、仕事よ」
メニュー表を交換するとむつは、ひらひらと手を振った。
「悩むなぁ…けどここは、鶏メニューが多いんだな」
「鶏がメインだもん」
ぽんっとおしぼりを潰して開けると、山上は汗をかいた顔を拭った。むつは、それを少しだけ羨ましそうに見ていた。
「私、決めたっ」
「何にすんの?」
「教えないもーん、社長は?」
「笹身だろ」
教えなかったむつの代わりに、冬四郎が小馬鹿にするように鼻をならして答えた。むつは、鼻の頭に皺を寄せて舌打ちした。
「笹身ですか、美味しそうですよね。私は…南蛮漬けにしようかな、山上さんと宮前君は?」




