6話
むつはそつ言いつつも、落ちている腕にざくっと刀を刺した。その様子を見ても篠田は、顔色を変える事もない。
「何がしたいの?それに新たに力を貸してくれたのは誰?」
『何がしたい、ですか…わたしはただ昔のように航海をしたいのですよ。色々な所に行きたい、それだけです』
「力を貸してくれたのは?」
『それはお教え出来ませんね。そういう約束でしたから…けど、あなたはあの方にか近いのでは?』
「残念だけどさ、自力走行する船なんか…幽霊船でしかないよ」
むつはそう言うと、刀をしまった。だが、右手は柄に添えられている。
「死ぬ前に、誰の手助けがあったのかは教えて欲しいけどな」
『死ぬ?あなたが、ですか?それとも、わたしの事ですか?』
切り落とした腕は霧のようなものになり、さらさらと消えていった。
「何?…っうわ‼」
むつがさっと部屋の中に視線を向けている間に、床から無数の腕が伸びてきてむつの足をしっかりと掴んだ。靴やズボンをつかまれ、引き剥がす事も出来ない。
むつは刀を抜いて、腕を切りその場を離れようとしたが、今度は篠田に腕を掴まれた。
右手を掴まれ、刀を使う事も出来ずにいたが、左手に持ち変えて篠田の首を狙った。だが、左手で持つのに慣れていないせいか傷は浅く切り落とすまではいかなかった。