6話
ゆっくり階段をのぼっていくと、明らかに下の階とは様子が違っていた。天井のシャンデリアも壁に備え付けられた蝋燭立ても、装飾がきらびやかだった。絨毯もより分厚いようで、足が沈む感じがして少しだけ歩きにくい。
むつはゆっくりと目的の部屋の前まで行くと、金色のドアノブに手をかけた。絶対にそこに居る自信があった。
ぎぃぃっと軋むような音をたてて、ドアを開けた。中は真っ暗だったが、すぐに釣瓶火がついてきたので、部屋の中は明るくなった。
むつが見た通り篠田は、テーブルに肘をついて座っていた。うっすらと笑って、むつたちが来るのを待っていたようだ。
『遅かったですね、お疲れですか?』
篠田がむつを見て笑みを深めた。その笑みは、普段の篠田の物とは違っていて、気持ちの悪いものだった。颯介と祐斗は、その視界から守るかのようにむつの前に立った。
『みなさん、お揃いですね』
篠田の口の動きに合わせて、言葉が発せられるが、その声は篠田ではなかった。
「付喪神だな?ただの器物のくせに随分な事が出来るみたいだね」
『ただの、ではありませんよ。海で死んだ者たちと一緒になってますからね。もうすぐ付喪神になれるという時に、この船と共に沈んでしまいましてね』




